ポテチストロベリー、チョコレートガム①

6/22
前へ
/22ページ
次へ
美しい人は何をしても様になる。二次性徴を遂げる前の男性的な骨格が生まれ出した少年は、特に神秘じみた美しさを纏っている。小学高学年の女子生徒と同様の、アンバランスさやふとした瞬間に攫われてしまう儚さが、彼らには潜在しているのだ。しかし、そう美しいと目を奪わせる人間は極少数で、大抵の人間はふかし芋と同等である。そんなゴロゴロと野菜に点がついたような連中の中で、連は一際美しく輝いていた。 美夏は連の隣に腰掛け、バクバクと高鳴る心臓を普段通り抑えふかし芋の代表である美夏は一限目の国語の教科書を引き出しから取り出し予習をするふりをした。連の笑いすぎるとチワワが吠える声に似る、甲高い笑い声をBGMにシャーペンでいらないプリント用紙に落書きをした。教科書とノートで二重に隠しつつ、一生懸命書いた作品が評価されなかった悲しみを紛らわすべく、今ハマっているアニメキャラをゴリゴリ描く。(渡辺ちゃんは男同士で恋する奴が好きみたいだけど、うーん。大体私男キャラ上手く描けないし、筋肉むずすぎ。てかリマリアかわよすぎ、覇権アニメにも程がある。ツンデレの時代はもう古い、これからはクーツンよな、クーツン。この俗語良くない?これじゃデレ要素ゼロなんですけどもw) 身体が描けず、マッチ棒みたいになってしまったが美夏は構わず隣に主人公のライバルキャラを描いた。男はななめ顔しか描けないので少し口を結んだ仏頂面の眼帯男をせっせと描いていると、担任の先生が教室に入り朝礼を行った。美夏は妄想に浸りすぎて一瞬反応が遅れてしまい座るのが皆よりワンテンポ遅れてしまった。担任はそんな美夏にもう居眠りかとクソしょうもない弄りをし、皆から苦笑を浴びせられた。 羞恥で顔を赤く染めた美夏はなるべく目立たないよう下を向き、急いでプリントを片付けた。担任はまだ20代と若く、顔立ちもそれなりに整っているが故にズケズケと陣地に侵入するので美夏はデリカシーのなさが嫌いだった。女子たちは当たりだと喜んでいたが、顔面偏差値はどの部分から比べても連以上じゃないので美夏にとってはキャベツに纏わりつく芋虫と一緒である。それに、青髭が目立つところが非常に気持ち悪い、連の口周りは産毛すら生えてないのに。  日直の号令を今度は遅れず、担任が出ていくまでじっと睨みつけ背中に火をつけた。  1時限目が始まるまでの小休憩時間に、美夏は連が後ろの友人との会話に不本意ながら耳を傾けた。後ろから話しかけている奴の声がでかすぎるのだ。たかだか5分程度の短いものだったが、とある単語に美夏は膝から先をピンと張らずにはいられなかった。急に体を強張らせたので不振に思われないか内心美夏は焦ったが、二人ともまるで気にかけずチャイムが途中で鳴ったので連は捻りを治し、姿勢を正した。話の内容が非常に気になったが、1時限目の担当である陰気な国語の教師が静かに入ってきたのでもやもやした気持ちを抱えたまま授業を受けなければならなかった。  連の言葉から聞こえた単語、それは明らかに美夏が小説を投稿したサイトだった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加