ポテチストロベリー、チョコレートガム①

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 私と真理は校門を出てすぐ近くのカラオケ店に入った。  家に帰ってもなんにもない私たちはこうして暇をつぶす道理を持たせてくれるところにいないとだめなのだ。  3時間パックでなけなしの小遣いをはたき、魅惑の世界へといざなう。一体どこからお小遣いが出てきているのかだって?それはもうめくるめく大人の世界だ。真理は実家がとんでもなく金持ちで無制限に使ってもいい桁違いの金を持たされているが、貧乏な私はここに書くのをためらってしまう稼ぎ方をして楽しい時間を過ごしているのだ。思い出してもいやになる、歌を歌っている間くらいはつらいことも悲しいことも何もかも忘れておきたい。  私は真理の鈴が転がるくらいにかわいらしい声に合わせてマラカスを鳴らす。今流行りの恋愛ソングらしいが、私の家にはテレビもないしまったくわからなかった。私の持ち歌は家に置き捨てられていたCDの中のアルバムだけだ。これと中学の時に習った曲しか知らない。でもいいんだ。私は歌うことが目的じゃない。真理とこうして楽しい時間を過ごすことが目的なのだ。  「真理、あんたアイドルになれるよ」  私が茶化すと、真理は照れたのか顔どころか全身でそっぽを向いた。  冷たいな!と私が言うと、マイクを持ってない手がブンブンと上下に動いた。抗議しているようだ。  楽しい時間はいつもあっという間。もう退出の時間になってしまった。  私たちは追い出されるようにカラオケ店を後にし、通行人の多い道を肩を寄せ合って歩いた。なんだか今日は寒い。  真理は私の家まで付き合ってくれた後タクシーで帰った。  「また明日」  と、小さく微笑んだ真理の愛らしさといったら、犯罪級だ、  (これがいわゆるツンデレ…いや、クールデレ?クールデレツン???)  私は馬鹿なことを考えつつ家へのカギを取り出し扉を開けようとした。  その時、大きなものが倒れる音が辺り一帯に聞こえ、私の耳にも届いた。なんと大きな音だろう。何かが爆発した音に聞こえた。  私は好奇心のままその音の方へ駆け出していた。気が付いたら足が出ている、そんなタイプなのだ。
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