ポテチストロベリー、チョコレートガム①

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ポテチストロベリー、チョコレートガム①

 「おい、お前さ、させこなんだろ?やらせろよ」  私は梨香。偏差値がダントツでびりっけつの底辺高校で底辺学生している普通の高校2年生。趣味はえーと、ダンス、ピアノ、それから…。  「おい聞いてんのかよブス」  はー?!誰がブスですって!?私は思わず自己紹介を切り上げ、先ほどから呼びかけてくる失礼な輩をきつくにらみつける。ってか、させこって頭おかしいんじゃないのこいつ!!(させこはえっちをすぐさせてくれる女の子のこと )  そしたらビックリ、失礼男子は拓だった。このクソ頭悪学校でトップクラスのイケメンで、女子からはめちゃくちゃ目の保養って言われている金森拓だった。唇は薄く、目は大きくスラっとした鼻立ちに小さな顔に均衡の取れたモデル並みのスタイル。街中で歩いていたら逆ナン、モデル勧誘にしょっちゅう逢うだろうレベルの美男子。しかし、悲しいかな、天は二物を与えず。こいつは度の越したあほで、もうどうしようもないあほで、顔で人生を渡り歩いてきた奴なのだ。  だが、なんだってそんなあほイケメンの拓様が私を‘させこ’と決めつけ、ブスと暴言を放ったのか。そもそもなんで私みたいなどこにでもいる女子に話しかけるのか、頭にはてなを浮かべつつ次に飛び出る暴言に警戒し目を尖らせる。  「はは、なんだよその顔!睨んでるつもりかよ、つーか顔上げんの遅すぎだっての」  拓様は目と鼻と口がくっ付いた私の顔を見るや否や大笑いを決め、私は羞恥で顔を赤らめた。人の顔見て笑うとか、失礼にも程がある!  プクリと頬を膨らませた私を見てまた、フグみたいだとゲラゲラ笑い、それはもう楽しそうなこって。不愉快になったので、また顔を伏せようとする私を息も絶え絶えな拓様が阻止する。だから、なんの用なんだ!  「待て待て、すぐ顔伏せんなよ。ちょっとツボっただけだから。てかお前自分がさせこって言われてんのになんでそんな平気そうなの」  拓様は笑い疲れたのかちょっと肩で息を切りつつ、至極当然の疑問を投げかける。させこと言われることに私が嫌がらないのが不思議なようだ。なんでって言われても?と私は首を傾げ、別に?と返答する。拓様はそんな私に驚いたらしく、つい素の調子で嫌じゃないの?と可愛らしいことを聞いてくる。そうなのだ!拓様はあほだから俺様系が受けると思って下手糞な毒舌キャラになっているが、実際はチャランポランのあほちゃん系男子なのだ!他の女子はこうして弱気になった拓様を幻滅するというが、私はこっちの方が無害だし、それに可愛いから好きだ。私は拓様をじっと眺めてから口を開く。クラスに私と拓様以外残っていないことを確認しながら。  「だって私、させこだし」  目を丸くした拓様に軽いウィンクを決め、私はまた顔を伏せる。何を言えばいいのかわからずあたふたとしているだろう拓様を無視し私はもう一度自己紹介をやり直す。私は梨香。このクソ馬鹿高校で一番の――――。  
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