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はじまりは、小学五年生の十一月、クリスマス前の時期からなんだ。
その日、わたしはお父さんに連れられて、栞町の大きな駅ビルの前にいた。
一目見て、おしゃれなビルだなって思った。
エントランスの白い天井から青や紫の球がいくつもつりさがってる。
自動ドアの真上には、白いひいらぎの葉っぱとピンクのベルで飾られた大きなクリスマスリース。
その横には、黄色と赤、緑、いろんな色のライトできれいに光るクリスマスツリーがある。
ほんとうだったらすっごくわくわくするような風景だけど、そのときのわたしの目には、そこが悲しみの国への入り口って感じに見えたの。
お父さんに腕をつかまれて、ひっぱられるようにして一階のフロアの奥のエレベーターに乗る。七階で降りたとき、走ってもいないのに、手に汗がにじんでるのを感じた。
自動ドアの向こうに、カラフルな絵本がいくつも飾られている
その上に木でできた看板がぶら下がってて、『星降る書店』と書かれている。
「用事がすんだら迎えにくる。しばらくここにいなさい」
お父さんはそれだけ言うと、エレベーターに乗って行ってしまった。
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