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第一章 one more chance
「残念ですが……ご臨終です」
とある病院の集中治療室で、オレは人生を終えた。まだ三十路前だというのに、運悪く彷徨っていた認知症のどこぞのおじいちゃんが運転する車に跳ねられ、救急車で運ばれたのだが、打ちどころが悪く、息を引き取った。
で、何故そんなに詳細に死後に語ることが出来るのか、って?そう、オレは今、ストレッチャーに乗せられた自分のご遺体をふわふわ浮きながらぼんやり眺めることが出来ているからだ。駆け付けた両親が泣き崩れて遺体に縋っている。オレは慌てることなく淡々とその光景を他人事のように眺めていた。
ああ、オレは死んだのだ。そして今、オレはあの世とこの世の境目にいるってことで良いのだろうな。で、オレの魂はここにいる両親や病院の医師やスタッフたちからは全然見えていないのだというのもなんとなく理解出来た。
そう、オレは霊体となって幽体離脱ほやほやなのだった。
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