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1、アナウンサーとカメラマン
オレ、赤城隆仁は地方にある放送局に勤めている。テレビアナウンサー歴は三年。地方番組の司会やニュースなどを担当して、最近では固定ファンがつくくらい人気が出ている。
まあ、イケメンだし何より話が面白い。知識だってある。そんなオレがモテないわけがない。ただ、みんなから『赤城ちゃん』なんて、子供扱いされているのが気にくわないんだけど。二十四才という年齢と百六十三センチという背の低さがネックなのかもしれない。早くみんなが憧れるようなアナウンサーになって、女の子にもっとモテモテになってやる!
「赤城、こんな所にいたのか。今日のミーティング始まるぞ」
自販機の前でコーヒーを買っていると、河本から声をかけられた。
「もうそんな時間だっけ。すぐ行く」
河本航平は同じ局で働くカメラマンだ。オレが外の取材をするときは河本と一緒に出ることがほとんどで、かれこれ二年くらい一緒に仕事している。初めは普通にアナウンサーとカメラマンだったのだが、オレがレギュラーで出演している情報番組【あさとひるのあいだ時間】のコーナーで地域の美味しい店を取材する際、河本がカメラ越しにツッコミを入れるようになって、それが評判で何かと二人で動くようになったのだ。
河本は中々鋭いツッコミを入れるのだが、オレもそれに負けじと反論するものだから、視聴者にはそれが面白いらしい。オレらとしてはプライベートで話をしているような感覚で喋っているだけなんだけどな。実際、仕事以外でもよく飲みに行ったり遊びに行ったりしている。
「ミーティング、内容なんだったっけ」
「来週のファッションショー中継の件だろ。お前めっちゃ楽しみにしてたやつ」
「あ!佐伯ユキちゃんと会えるんだった!美容室行っておかないとな」
「……相変わらずの女好きだな。少しは落ち着けよ」
河本が呆れたように言う。確かにこの仕事だと女の子とよく出会えるしそれが生き甲斐でもある。河本だって嬉しくないわけ無いはずだ。いやまてよ、俺より六才年上だから、もう興味がなくなる頃なのかもしれない。
「女の子に興味なくなるとか、もうこの世の楽しみ終わったな」
俺は河本の肩をポンポンと叩きながら頷いた。
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