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「俺が好きだって思わなければ、今まで通り一緒にいられる。…だから同僚でいよう。な、その方が赤城も楽だろ?お前が結婚する時は祝ってやるから」
河本は少し何か諦めたような顔を俺に向け…って、アホか!俺は手元にあったクッションを手に持ち、思い切り投げつけると河本の顔面を直撃した。
「びっくりした!何するんだよ!」
「アホかあ、お前!」
オレはもう色々腹が立ってきた。
「好きだって言ってみたり、同僚でいようだとか!勝手にコロコロ変えるんじゃねえよ!こっちの身にも、なれよっ!今まで通りなんて、もう無理なんだよ!」
もう好きになっているというのに今更、何を言い出すんだろう。そりゃ何も言ってないオレもいけないけど…だいたいお前がハッキリしないから!
「赤城」
「こっちはどうしたらいいか分かんなくて、どう進めばいいか分かんなくて…思わず色々検索しただろうが!」
「…は?」
「今のなし!とにかくオレを好きと思うのやめなくていいから!そのまま好きでいてくれよ」
勢いにのせて随分と恥ずかしいセリフを言っているのは分かるけど、もう止まらなかった。オレは気がついたら河本を必死に引き止めていた。河本は驚いた顔をしてこっちを見ている。
「…気持ち悪くないか?」
「まだ言うのかよ〜!気持ち悪くないってば!気持ち悪かったら甘やかしたりしないだろ…ああ、もぉ!」
オレは河本の服を持って顔を引き寄せ、そのまま河本にキスした。触れた時に感じた、柔らかい唇。ちょっとだけチクチクしたのは、髭だろうか。唇を離すと、河本は大きく目を見開いて口をパクパクさせていた。
「分かっただろ、気持ち悪かったらこんなことしねえよ!」
顔がどんどん熱くなってきている。きっと赤くなっているに違いない。流石に河本の顔が見れなくて、俯いた。
少しだけ沈黙の間があったのち、オレが投げたクッションを河本が投げてきた。
「って!何だよ!」
オレはクッションを受け止めて、河本を睨むと…口もとを右手で覆い、赤くなった河本がいた。初めて見る顔に、怒る気力も失ってしまった。
「ちゃんと言ってくれないと、こっちだって分かんねえよ!お前は気を遣ってるだけだと思って…」
「お、お前がもともと…!」
クッションをもう一度河本に投げるとそのまま投げ返されて、今度はオレの顔に直撃する。ってか、何やってんだ、オレら。
オレはおかしくなってきて思わず笑い出してしまった。すると、河本も笑い始めた。二人で腹を抱えながら笑う。そのまま二人とも床に寝転んで、部屋の天井を見ていた。
「はー、馬鹿馬鹿しい」
「本当にな。もー、色々考えるの、性に合わないからさあ、河本」
「ん?」
「とりあえず一緒にいようぜ。同僚としてじゃなくてさ」
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