1、アナウンサーとカメラマン

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頭を掻きながらスタッフルームへ入ると、スタッフたちは着席していてみんなの視線が集まる。中央に座っている女性は製作部長、藤村部長だ。黒髮のボブに赤いフレームのメガネ。うう、いつもながら迫力があるなあ。 「赤城ちゃん、遅刻なんて、いい度胸ね。いつから重役になったのかしら?」 慌てて時計を見ると、ミーティング開始時間の五分前だ。 「ええ?まだ五分前じゃないですか」 「社会人たるもの十分前には集合でしょ!しかも上司より遅くなって」 そこから藤村部長のお小言が始まる。あーあ、やらかしちまった。 こってり怒られたあと、ミーティングが始まりファッションショーの詳細を聞きながら各々自分の役割を確認する。年に一回、行われるこのファッションショーは女の子向けのものだ。現役モデルやアイドル、タレントが来る。それを目当てに来る観客、特に女子のお洒落度はハンパない。 バッチリお洒落を決め込んで、憧れのモデルやタレントに逢いに来るのだ。 普通ならこんなイベント、東京で行われるのだろうけど主催のお偉いさんが故郷を活性化したいとかナントカでこの地方都市で行われていた。俺ら地方局が全国局に中継をしてもらい、中の様子をレポートするのが毎年のことだった。 昨年までは先輩アナウンサーの清武さんが担当していたんだけど、今年はオレが担当になる。清武さんの手伝いで何回か行ったことはあるけどメインは初めてで、緊張するな…… 「緊張しても女の子はチェックするんだろ」 ミーティングが終わった後、スタッフルームに戻ってお茶を飲みながら河本が呟いた。 「当たり前だろ」 一週間後。 ファッションショーの会場となったホールは八割、女の子で埋め尽くされている。オレはお気に入りのスーツを着て現場入りした。せっかくバッチリコーディネートしたというのに、スタイリストに蝶ネクタイにしろ、と言われてブルーだ。 「蝶ネクタイだなんてダサくねぇ?」 カメラリハーサルをしながら河本に言うとカメラを回しながら笑う。 「お前、今日何しに来たんだよ」 「はいはい仕事でしたー」
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