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サカサマ
放課後の校庭で君が逆上がりの練習。僕は揺れるブランコの上で君の額から落ちる汗をじっと見ている。
君のスカートが翻るたび僕の胸の動悸は止め処なく、懸命な君に悪いとは思いつつも時折り見せる白いパンツに目を奪われている。
そして逆上がりが出来ず悔しそうに歯を食いしばる君に、ちょっとだけ心が熱くなった。
ついに草臥れた君がサカサマにぶら下がり、縦鉄にもたれかかった僕をみてスネ始める。赤く高揚した君の顔はとても美しく、その無防備な唇にキスしなかったのが、この夢の唯一の心残りだった。
これはたぶん恋心?
蒙昧と生きた少年ではその答えが見つからない。
やがて大人になった僕がその夢の続きを体験することになる。
天井から吊り下げられた一本の荒縄。
なんの罰か知らないがお前はそこにぶら下げられた。真っ白な肌に鞭うたれた痣が痛々しい。
助けるべきか立ち去るべきかを俺はひとりでずっと悩んでいる。
無残、と思ってほしいのか、してやったりと思ってほしいのか。
朦朧としたお前は濡れた瞳で俺に答えを求めるがどうにもやるせない。
(どうしてそんなに妖艶でいられる?)
お前が加害者であることが疑わしい。
審判が始まる前に俺の手で始末してやりたいと思うほどに。
純白の肌が鬱血し、潤んだ瞳は真っ赤に染まる。垂れ下がる乳房は妖しくも匂い立ち、その唇がとにかく濡れていた。
そう、【サカサマ】のお前はいつの時代でも俺を魅了してやまない。
一度だけ口付けさせてくれよ
あの夕闇の校庭で見た夢の続きを今ここで
色艶やかな君の唇に熱いダイナマイトを
たった今、この輪廻転恋にひとつの区切り
そして次の転生はない
今生一滴の縁
夕暮れ空の瓦礫の下、共に暴発して果てるまでの一時の逢瀬だ。
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