第二四一段 望月の円かなることは

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第二四一段 望月の円かなることは

 澄み渡る夜空に浮かぶ美しい満月を、見上げる人は誰もいない。  やがて満月は欠けていく。  皆、一晩のうちに月のかたちがどれだけ大きく変わっているのか、考えたこともない。  *  人は病気が重くなった時、快復する間もなくあっけなく死んでしまう。  けれども、健康な時には、その状態がずっと続くだろうと考え「生きている間、多くのことを成し遂げたい」と思っている。  それなのに、死が近づいた時には何も果たせていないことに気づく。  己の怠惰な生活を後悔し「あれもしたかった、これもしたかった」と願いが湧き起こってくるけれど、結局、何もできないまま死んでしまう。  このような人間が実に多いので、皆、胸に留めておくべきだ。
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