一樹の小話

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一樹の小話

柔らかい光がレースカーテン越しに部屋を照らしている。 その光を浴びながらゆっくりと目が覚めた。 知らない間にあたしはブルーのシーツに身を包んでいた。 夏物の布団にするには少し早かった。 あたしより一回り大きい一樹も同じようにシーツに潜っている。 寒がりな一樹は、膝と腰を折り曲げてやり過ぎなくらい全身ぐるぐる巻きになっていた。顔だけが見えていてだるまみたい。 寝心地が良さそうには見えないけど、そんな状態でもすやすやと眠れるのはうらやましい。 【AM8:49 SUN 20.2℃ ・・・】 窓の外は完全に雲に包まれてしまって青い空は少しも見えない。 今にも泣き出しそうな空、なんて思っていたら雨音が聞こえ始めた。 あ、窓開けっぱなしだ。 あたしが起き上がると一樹も目を覚ましてしまった。 「ん、あめ・・・」 「うん、窓閉めないと」 「大丈夫じゃない?小雨だし、風もないから入ってこないよ」 「・・・うん、そうだね」 一樹は「ねえ」と呟いて、横になったままあたしのパジャマの袖をつかんだ。 「またお話してあげる。聞く?」 「うん、聞く」 また、いつものように一樹の妄想話が始まる。
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