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◇◇◇
やっとゲットした衣服にメルの手で着替えながら教えられた。
俺の身体には悪い奴らに攫われた際、隷属紋という魔術がかけられたらしい。手首や足首にある蔦のような痣がそれだ。
その為に、俺は他人からの命令を拒否できない。命令されればどんなに嫌でも身体は無理矢理相手の言う事を聞いてしまう。
例えば冗談であろうと、たとえば先程の様に無意識の指示であろうと、って事も起こりうる。
だから城の中でも決してメルから離れるな。と何度も言われた後、俺はメルの執務室に連れて行かれた。
◇◇◇
優しい午後の日差しが差し込むメルの執務室。
仕事をするメルに見惚れながら午後は本棚の整理を手伝っていた俺は先程言われた事を思い出す。
メル曰く。
先日、俺と一緒にこの世界にやってきた聖女ユリカ様と一緒に見た目だけはいかにも王子様っぽい脱獄犯に俺が攫われた時はさすがのメルも血の気が引いたという。
命令されれば一切抵抗できない俺は丸裸にされ、あと数センチで輪姦って場面でメルに助け出されたらしい。
数センチってどういうことか理解できないけど、こういうところは覚えてなくてよかったね!
でもついさっきメルの熱の塊を受け入れているのを見せられた時に気が付いて、着替える前の風呂でも確認したけど、俺はメルを受け入れる場所にも手首や足首と同じ紋を打たれている。
だから……多分。昔もそう言うことは多発してたとしか考えられないし、一番最初にメル会った時は、多分沢山の人達に輪姦されておもちゃみたいに捨てられて、あ、もう俺、このまま全部なくなっちゃえばいいのになって思ってたような気がするから元々俺、汚れちゃってるのか。って考えてたら何も言ってないのにメルに執務室の隣の休憩室に連れ込まれて、長椅子の上で付根と入口の紋を延々と舐められ「ユキには穢なんてない。美しい」と連呼されながら朝のベッドの中の続きをさせられた。もちろんもう一度、抜き差し見せつけプレイ付き。
午後のお茶の時間には二人共身支度を整えたものの、休憩室の長椅子の上に沢山落ちていた輝石でアレクシには何をどれ位していたのか速攻バレました。
ちなみにその誘拐事件の後、すぐにユリカ様は元の世界にお戻りになったらしい。俺は会ったことすら覚えてないんだけど。タイミング良く宮廷魔術師長のダニーが召喚された人を元の世界に戻す方法を見つけたみたい。ついでにずっとユリカ様と恋仲だった第一王子様も王位継承権を剥奪されてもいいとユリカ様への愛を貫き、ユリカ様の元の世界に一緒に行ったらしい。愛の力だね!って言ったらお茶の時間に遊びにきてたダニーが吹き出し陽気に笑った。
「帰還魔法陣の中であの女は『こんな顔面偏差値だけの見栄っ張り七光男、紐にしかならない。要らないっ!!お願い一人で返して!!』って叫ぶし、第一王子も『紐だと?!何を言う!私は剣術も魔術も一流の師に……』って取っ組み合いの喧嘩してたぜ。あ、最後の消える瞬間の『私の世界は剣も魔法もないのよぉぉぉ』のあの女の叫び声は笑えた」
ダニーの話に近衛兵さんから将軍様って呼ばれてたジーンが手を叩き大笑いしてたから、きっと二人は大丈夫だと思いたい。ほら喧嘩するほど仲がいいって言うし。
ちなみに、今日メルに仕事をしろって怒っていたセオドア様ことテオも、その時、俺の為に色々考えてくれたみたいで、俺が悪い奴らの紋のせいでこの世界から戻れない事を向こう人に教える為にと、俺がこの世界に来た時に着ていた向こうの衣服の一部と、かろうじて残っていたらしい俺の名前がわかる公立図書館のもとの思われるボロボロの会員証(ユリカ様に確認したらしい)を第一王子様のポケットに預けてくれたらしい。
「あちらの世界は魔術はないもののカガクという力で血液や体液の分析ができるそうですし、暮らす住民は生後すぐに全て登録されているそうですからきっと、ユキ様に起きた悲劇も伝わる事でしょう。きっと。うん、いいシステムだなぁ。魔力なら個人個人で型が微妙に違うからうちにも導入しようかな。うん」
なんだか一人納得しながら語るテオの笑顔はダニーに似てた。けどやっぱりジーンが大ウケしてたからよしとしよう!
ただ、何となく……だけど、俺は向こうでも天涯孤独だった気がしないでもないから、多分別に伝えなくてもいいんじゃないかな?俺、こっちでメルと幸せに暮らしてるし、みんなも居てくれるし。と夕食の後でメルに相談したら、その後のベッドの中のメルは凄かった。色々と。
多分翌日、服を着る必要がないかなってくらい。うん。凄かった。
そうやって。
メルに抱かれて愛されて。
そのまま眠った俺には、きっと明日がやってくる。
燦々と差し込む朝日の中、目が覚めて。
白いきれいなシーツがひかれた大きな柔らかいベッドの上の俺は隣に眠るメルを大好きなことは覚えていても、きっと自分の名前を覚えていない。
でも大丈夫。
毎日、毎朝、俺はメルに俺の名前を教えて貰う。恋の魔法をかけてもらう。
メルが大好きで好き過ぎて。
毎日沢山の口付けと沢山の幸せの欠片をシーツの上に撒き散らす。
メルが生まれたこの世界が愛しくて。
メルが生きるこの世界が大切で。
僕は僕の幸せをお裾分けする。
きっと明日の俺も笑ってる。
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