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◇◇◇ 「愛しい人よ、何故泣いている?」 なんとか泣き止んだ俺の頭をなでながら王様っぽいキラキラ感と威厳のあるイケオジさんは侍従のさんと名乗るお兄さんから濡れた布を受け取り俺の顔を拭いてくれた。 ベッドの上、イケオジさんの素足の間に何も着ないままで座らされて……。しかも何か恥ずかしい台詞を言っていた気がする。 「ひょっとして、自分の名前を忘れたか?」 「ええっと……はい。ごめんなさい……」 イケオジさんに耳元でたずねられた内容に小さく頷いて答える。なんとなく、申し訳ないなとおもったから。 「謝るな。我々が悪いのだ。わからない事は何でも聞け。お前は私の最愛ユキ。私はお前の最愛メルヴィン。メルと呼べ」 「メルヴィン様?」 「そう、私の名前はメルヴィン。ユキだけは愛称のメルで呼んでいる」 「め、メル、様……?」 「メルでいい。覚えたか?」 「メ、ル?」 「良い子だ」 優しく教えられたメルの名前を口にした途端、さっきまでの涙が嘘みたいに幸せな気持ちが胸に広がる。まるで魔法をかけられたみたいに自分の名前がユキだと理解できて、目の前のメルが愛しくてたまらない。 強く抱き締めてくる腕が嫌じゃない。それどころか全部を明け渡してしまいたくなる。 後ろからそっと顎を撫でられた後、クイッて後ろに向かされて、濃厚な口付けをされた。それこそ口の中、全部。魂まで舐められる勢いで。 俺は自分の名前も知らなかった。けれど、この背中越しに抱き締めてくる人が大好きで好き過ぎてたまらないことだけは忘れていなかった。 きっと一言では語れない、色々を乗り越えて、今の俺達はこのベッドの上に居るんだって何となくわかって凄く幸せだって思った。 メルの濃厚な口付けといつの間にか太腿を撫でていた大きな熱い手のひらにちょっと下半身に熱が集まった。シーツがかかっていてよかった。 俺はちゃんとユキという自分の名前とメルの名前を一度で覚えたのに、メルはそのまま、ユキという名前だともう一度、身体中に何度もキスしながら教えてきた。胸の先を強く摘まれて思わず変な声がでて、両手で口を押さえているのにメルの名前ももう一度、沢山の身体中へのキスと一緒に刷り込まれた。撫でられていた太腿がぷるぷる震えてたの、絶対にバレたと思う。大人の色気、マジ怖い。そしてシーツさん色々を隠してくれてありがとう。 そしてそのままの勢いでメルは俺の髪の毛もといてくれた。同じくメルの素足の間に何も着ないままで座ってる……ちょっと背中……というか尻に固くて熱いものを感じたのはきっと気のせいだと思う。思いたい。俺の尻から垂れるナニカと擦れてクチャリクチャリと水音がする度に熱い吐息を耳元に感じたのも多分気のせい。俺のあらぬところがキュンってしたのも気のせい。メルに耳をペロリと舐められ甘い声が出たのも、以下同文。 その流れで、部屋に差し込む爽やかな日差しに申し訳ないような雰囲気の漂うメルと俺を、仲良しでなによりですみたいな満面の笑顔で迎い入れる侍従のお兄さんが用意してくれた朝食をメル手づから「あ〜ん」で食べさせら……食べさせていただきました。うん。 お腹が一杯になって、侍従のお兄さんが朝食の片付けをしているのを見ながらお茶を飲んでいるとメルが俺を後ろから抱き締める腕の力を強め後めながら、色々教えてくれた。 ここは俺が元々暮らしていた世界とは異なる事。俺は穢を払うため召喚でこの世界に来た事。悪い奴らに記憶を奪われてしまった事。今だに記憶の定着が良くないこと。メルはこの国の元王様で、先日息子の第五王子アレクシさんに王位を譲位した事。そしてこの建物がメルの持つ離宮の一つである事。一つ一つ丁寧に教えてくれた。
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