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「本当にいいのか?」 最後に綺麗な瞳で俺を見つめたメルが聞いてきた。 俺はこの世界に来た時、無理矢理この身体に魔術紋を打たれていて、感情の起伏に合わせて自分の記憶を結晶化する様になったらしい。手首や足首にある蔦のような模様も目的は違うけどその時に一緒に打たれた物らしい。 そんな記憶の結晶化の紋は俺には全く目に見えないけれど、俺の臍を中心にぐるりと紋を描き心臓までその図式に巻き込んでいるらしく、メルが悲しげな視線を向けて熱く大きな手で下腹部を優しく撫でてくれた。 今まで俺は抜け落ちた記憶の欠片で穢を払うだけじゃなく、沢山の人々を幸せにしているという。特にこの国に来たばかりの頃の物は偶然にも、悪い奴らに酷い事をされてきちんと結晶化出来なかったせいで、小さな星の欠片みたいな砂糖菓子のような状態だから、寿命以外の病気なら何でも治せちゃう薬として重宝されているらしい。 でもそれは俺の大切な異世界での記憶の欠片で、魔術研究が進めばいつの日か俺に返す事が出来るかもしれないとメルは語った。そんな大切なものだから、みんなに使うのをやめさせたって誰も何も言わないよ?って言われて、でも俺は「今までの俺と同じ。みんなの為にそれは使って」と答えた。 だから最後に綺麗な瞳で俺を見つめたメルが聞いてきた。「本当にいいのか?」って。 「うん。だって」 見上げたらメルの唇がそこにあったから。 チュッと軽く口付けて、何かが視界の隅できらりととした気もするけれど、勇気を貰って俺は自分の気持ちを口にした。 「今の俺にはメルがいるから。きっとそれは俺でなく他の誰かに使うべきなんだ」 言った言葉には嘘も飾りもない本音。だから俺の言葉に大きく目を見開いたメルの反応に戸惑っていたら、さっきよりももっともっと強く抱きしめられた。 「どうしてユキは毎日自分の名前を忘れていても同じ事を言うかな……」 そう言ってメルは俺をもう一度強く、とても強く抱き締めて、その水晶みたいに綺麗な瞳を潤ませていたことに俺は気が付かないふりをした。 まぁ、メルの話には色々驚いたけれど、一番衝撃的だったのは俺がメルの配偶者だった事。しかもまだ新婚だそうだ。 先程の侍従のお兄さんの笑顔の意味が今、判明。 あらあら、うふふって見られてた訳ですね。恥ずかしい。 目覚めてからメルとはずっと素肌が触れ合っても恥ずかしさはあっても不快感はなかった。だから今のメルを好きだという気持ちはきっと嘘じゃない。多分俺はこういう感はいい方だと思う。だから大丈夫。 後ろ抱きから今や向かい合わせに抱き合って若干メルの肌の香りに安心感さえ感じているんだからちょろいと言われればそれまでなんだけど。 多分イチャイチャというものをメルとしばらくしていたら侍従のお兄さんはいつの間にか居なくなっていた。そろそろ服が欲しかったので、メルにお願いしたら無言で笑顔を返され、再びベッドの中に引きずり込まれたのでそれ以上はお願い出来なかった。 物理的に。 ちなみに、体格差と足の間に垂れる感覚の辺りから何となく感じていたものの、俺はメルを受け入れる方でした。いや、あんなイケオジをこんな俺が襲うなんて烏滸がましすぎて当然とは想うが、別の生き物ですか?って思う位にあんなに大きなメルを受け入れられた俺の身体に人体の神秘を感じた。途中わざと俺からも見えるような体勢で白濁した泡を纏った血管が浮き出ているメルのそれをゆっくり一番奥のその先まで抜き差しされた時は、もう最高に気持ち良くて何を叫んだか覚えていません。ほら俺、記憶の欠落激しいから問題ないよね? あと、今更なんだけど、メルとイチャイチャする度にベッドのシーツの上にキラキラと光る宝石みたいなのが増えていくような気がする。 多分悪いものではない。寧ろなんだか幸せな気分にするもの。 だからそのままに、俺はメルの腕の中でメルのあれやこれやを沢山受け入れて、恥ずかしい声や何やかんや色々を沢山沢山出していた。
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