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◇◇◇
「父上っ!何をしていらっしゃいます?!!」
まだ昼前だというのに散々メルの愛情を肉体言語で教えられ、声は枯れて、これはもう今日は一日、ベッドの上でシーツ人間だと思っていたところで突然、部屋の扉が乱暴に開かれると共に乱入者が現れた。
「新婚の蜜時を楽しんでいるが何か?」
思わず驚いて布団の中に潜ったものの、動揺もしないメルに顔だけ出してみると、メルに似た瞳の空色の髪の青年がそこに居た。
「え?父上?……ってことはメルの息子?ってことは俺の息子?!」
目の前の青年は空色の髪がとても美しい。何となく見知っていたような気もしない事もない。こてりと小首を傾げて考えていると隣のメルが俺を抱きしめてきた。
「大丈夫、ユキ。俺は妃も妾も全員死別していて今の配偶者はユキだけだ。これは俺の死別した側妃の子、五男のアレクシ。先日俺から王位を譲渡した、この国の新しい王様だ」
かるーくさらっと語られたメルの重たい家族構成に目眩がする。
俺って多分目の前のアレクシさんより年下っぽいのに既にこんな大きな子供が最低五人いる訳ですね?ちょっと先に教えて欲しかった。いや教えられても対応厳しいとは思うけど。
しかも息子に同衾の様子を見られるってどんな罰ゲーム。
「いくら新婚の蜜時とはいえ三ヶ月は長すぎます!!そろそろ城に顔を出してください!!退位されても残した仕事は消えませんっ」
「まだ三ヶ月だ。もう少し待て。それに私はユキと輝石を作らねば……」
「はいはい。先日、結婚式と初夜での口付けで大量に作っていただきましたから一ヶ月分以上は余裕でありますよ。引きこもりたいのなら、きちんと片付けてから、好きなだけ領地に引きこもってください」」
アレクシさんの言葉にメルのキラキラだった王様の威厳が萎んでいく。おお、アレクシさん強いな!さすが現在の王様だ。
「え?浄化の輝石ってこれ?」
「そうだよ。ああ、今日も沢山口付けたから沢山出来たね」
もしかして?と思ってさっきから気になっていたキラキラ光る石をシーツの上から拾い上げたらその指にメルが口付けてきた。おう、なんとキザな仕草が似合うんだ。イケメンめ。……って、ちょっとまて!
「え、これメルとの口付けでできるの?!」
なんかさっきメルが泣いて話してた俺の記憶の欠片に似てる気がしなくもなくないんですか?!俺、また何か忘れてる?!
「昔はユキの苦しみや悲しみを糧にユキの記憶からつくられていたが、今は私と口付けるだけで記憶の欠落なく作ることが出来ている」
焦る俺の頭にチュッチュッと口付けつつ、何だか偉そうなポーズをとるメルにアレクシが冷たい視線をなげた。
「多分うざくてしつこくて面倒くさい父上の記憶を詰めているんじゃないかっていうのがうちの宮廷魔術師長の予想です。詳しくは判明していませんが、今は純粋なユキ様の過去の記憶の欠片という訳では無さそうですのでご安心を。ただ、ユキ様が幸福になればなるほど魔力が強く硬度が高いものが作れるそうです。……お幸せになられて、本音に、本当によかった……」
優しく頭を撫でてくれるアレクシの指先が何だか少し懐かしくて嬉しい。
何だかしんみりとしてしまった中、パンとアレクシが手を叩き笑顔をみせた。
「はいはい、父上。セオドアが待ってます。執務室に行きましょうね」
アレクシの合図に侍従さんのお兄さん達が沢山入ってきて、メルの服を用意していく。
「私の蜜時が……」
愚図るメルも可愛くて。みんな笑顔なのが幸せで。うん、なんか俺、これをずっとずっと見たかった気がする。みんなが笑ってるのはとても嬉しい。
が!!!
今だにシーツに隠れていたから忘れていましたが……いや、絶対忘れちゃいけないんだけど、俺とメルはその……最中だった訳で。あれがこれにインな感じなのですよ、まだ。
ええっ?!どうしよう?!ってメルの顔をみようとした瞬間。
「さぁ、ユキも行きましょう」
「えっ?!」
アレクシのその声が聞こえた途端。
気がつけば勝手に身体が動いてた。
事後で……というかその瞬間までまさに中にメルが入っていたから、そのまま太腿に白濁が流れ出る。でもそんなの関係なく、シーツさえ纏わず全裸のまま、ベッドを降りた事後で怠さを感じるユキの身体が勝手にアレクシの前に歩み寄る。
自分の身体なのに思うように動かない恐怖に心が震える。後ろからシーツを持ったメルが駆け寄ってくれて、くるっと包んで抱き締めてくれる。
何が起きたのかわからない。
……いや、何となくわかる気がするけれど。
アレはきっと思い出したら駄目なもの。
「っ!……ユキ様、脅かしてしまいましたね。大丈夫。……ユキ様もご一緒に行きましょうね」
急ぎ侍従さんたちを下がらせて。
メルにシーツを巻かれ抱き締められながら涙がとまらなかった俺をアレクシもその上から強く抱き締めてくれた。
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