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◇◇◇
目が覚めたのは白いきれいなシーツがひかれた大きな柔らかいベッドの上。
素っ裸で寝ていた自分に驚いた。
「俺は!裸族では!無かったはず!!多分!!」
慌てて跳ね起きて、自分の身体を見ると、多分昔は無かったはずの、手首と足首、あ、……あと……下半身のアレの付根にぐるりと変な蔦のような痣が付いていた。
イヤな予感しかしない……理由はわからないけど。
「ここは何処?」
っていう基本的な疑問を思わず口にして
「あれ?……俺……名前……」
そのまま自分の名前がわからないという事に気がついた瞬間、失ったことさえ忘れていた失ったものの大きさにシーツに包まったままベッドの上に座り込み、号泣してたら空みたいに青い髪の毛の男の人が部屋に飛び込んできた。
「よく眠れましたか?」
なんとか泣き止んだ俺の頭をなでながらアレクシは俺の顔を濡れた布で拭い、髪の毛をといてくれた後、朝食の用意をしてくれた。先に服が欲しかったけど、お願いしたら無言の悲しげな笑顔を返されただけだったので、それ以上はお願い出来なかった。
「ここは何処ですか?」
朝イチで口にした事を尋ねるとアレクシは一瞬さらにとても悲しそうな顔を見せたあと、もう一度俺の頭を撫でで、優しく抱きしめてくれた。
「ひょっとして、ご自分のお名前もお忘れですか?」
「ええっと……はい。ごめんなさい……」
耳元でたずねられた内容に小さく頷いて答える。なんとなく、申し訳ないなとおもったから。
「謝らないでください。我々が悪いのです。我々が……」
そう言いながら俺を抱きしめる腕の力を強めたアレクシは俺の名前がユキであること、ここが俺が元々暮らしていた世界とは異なる事、俺は聖女召喚に巻き込まれた一般人であること、そしてこの建物がこの国の王様のお城の中にある塔であることを教えてくれた。
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