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Xの意識が肉体に戻っていくのを眺めながら、私は考える。
あの『異界』には本の形をした『異界』が存在していた。そして、私たちが存在しているこの世界も、どうやらそのうちの一つであるらしいということが、わかった。
ならば、私たちの世界とは、何者かに記述されてあの図書館に存在するものなのだろうか。果たして、あの本には、私たちの世界のありさまが全て記されているとでもいうのだろうか。
だとしたら、私たちという存在は、本の中に生きる存在だというのだろうか。
「……だとしても、私たちの目的は変わらないわ」
あえて口に出して、確かめる。
仮にそうであったとしても、私という人間がこうして存在している以上は。私たちのプロジェクトがこうして動いている以上は。今も、そしてこれからも、すべきことは変わらない。
ここではないどこかである『異界』を観測し、いつかは異界潜航サンプルの目を通して観察するだけでなく、私たちがこの手で直接干渉するに至る。その時まで、私たちは実験を繰り返していくのだろう。この世界のありさまがどうであれ、それだけは、変わらないことだ。
寝台の上のXが、雨に濡れた感触を思い出しているのか、くしゅ、と小さくくしゃみをした。
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