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「そんな! あたしの気持ちは!」
「私だって…… 辛いのだ…… だが、我が藩の領民を露頭に迷わすわけにはいかんのだ…… 許しておくれ」
「嫌です! 大奥と言えば華やかなように聞こえて、家を背負った女共が鎬を削る毒蛇の巣! 陰陽師がすなる蠱毒とか言う呪いの儀式を人で行っているそうです! 私などきっと食われてしまいます!」
「ならぬのだ…… 他に手がないのだよ……」
「何を勝手なことを! お取り消し下さいませ!」
「すまぬ…… すまぬ…… 私だってお前と別れることは身を割かれるぐらいに辛いのだ…… しかし、藩主としてはこうせざるを得ないのだ」
瑠璃はその場で泣き崩れた。捨丸はそれに構うことなく ぱんぱん と、柏手を打った。すると、城仕えの女官達が漆塗りの三宝を持って現れた。三宝の上に巻物がいくつも積み上げられている。
「将軍様に気に入られるように色々と身に着けて貰おう。特に出島経由で天竺より仕入れた『かぁますぅとら』は完璧に身につけねばいかん」
「嫌です! 瑠璃はここにずっといとうございます!」
「すまない…… 朱鷺家の命運をお前に託すことになってしまった……」
こうして、瑠璃は大奥へと入る羽目になってしまった……
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