🦊

7/7
前へ
/7ページ
次へ
「えー、やだ」 「リョウシさん、こわーい」  子どもたちが口々に言いました。 「じゃあ、仲なおりだ」  お父さんにうながされ、ふたりは起き上がります。 「……ごめん」 「……わたしも、ごめんね」  それぞれがきちんとあやまると、 「よしよし。いい子だ」  お父さんはまんぞくそうに笑いました。  そんな三匹の姿を、お母さんぎつねはいとおしそうに見つめています。  そして、ふいにいたずらっぽくほほ笑んだかと思ったら、 「じゃあ、今度はみんなでおうちまできょうそうね。いい? うらみっこなしよ」  そう言って、楽しそうに走り出しました。 「あ、母さんずるいぞ」 「まって、わたしも行くー」  お母さんのあとに子どもたちが続き、 「よーし、負けないぞ」  子どもたちのあとにお父さんがつづいて、やがて見えなくなりました。 「……ふしぎなことも、あるもんだねぇ」  つぶやいたきつねのひとみから、ひとつぶのなみだがこぼれ落ちました。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加