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そんな会話をした後、ほかの場所へとさっていきます。
「行ったみたいね」
あたりがしんとしずまり返ると、母さんは言いました。
「母さん、今の人たちって、だれ?」
子ぎつねがおそるおそるたずねると、
「猟師よ」
と、さっきの男の人のような低い声で答えます。
「リョウシって、あの、父さんをころしちゃった人たちの仲間?」
父さんぎつねは、子ぎつねが生まれてすぐ、人間たちの狩りのいけにえになってしまったのです。
「そうよ。だからあの人たちにはぜったいに近づいちゃダメ。いいわね?」
母さんの言葉に、子ぎつねはおそろしさにぶるっと体をふるわせます。けれどすぐに、立ち向かうようにこう言ったのです。
「平気だよ。ぼく、母さんのそばからはなれたりなんかしないもん。ずっといっしょにいるから」
思いもよらないその言葉に、母さんはただほほ笑むことしかできませんでした。
月あかりが森を照らす夜。
「母さん、早くはやく」
「はいはい」
子ぎつねにお乳をねだられた母さんは、ゆっくりと立ち上がります。
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