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🦊
ここは、ふかい森の中。
あたりでは小鳥がさえずり、どこまでも緑が生いしげっていました。
木々のすきまから降りそそぐ朝日を浴びながら、一匹の子ぎつねがチョウをおいかけて遊んでいます。
「こら。そんなに走り回らないの」
やんちゃなその姿に、母さんぎつねは今日もため息をつきました。
「だって、楽しいんだもん」
子ぎつねは、母さんのちゅういなんてそっちのけで緑の中を行ったり来たり。チョウをつかまえようとジャンプするたび、まだほそくてかわいらしいしっぽがゆれます。
「まったくもう。しょうがないわね」
あきれ顔でつぶやいて、子ぎつねを見つめていると、小さな足音が聞こえてきました。だんだんとこちらに近づいてきます。
「……かくれるわよ」
きけんを感じた母さんぎつね。子ぎつねをくわえてさっとしげみに身をひそめます。
「ねえ、どうしたの?」
「しっ、しずかに!」
けわしい顔でピシャリとしかられ、子ぎつねも口を閉じました。どうやらただごとではないようです。
しばらくすると、低くて太い男の声が聞こえてきました。
「いたか?」
「いや、逃げられたみたいだ」
「……ッチ。今日は不調だな」
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