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 ここは、ふかい森の中。  あたりでは小鳥がさえずり、どこまでも緑が生いしげっていました。  木々のすきまから降りそそぐ朝日を浴びながら、一匹の子ぎつねがチョウをおいかけて遊んでいます。 「こら。そんなに走り回らないの」  やんちゃなその姿に、母さんぎつねは今日もため息をつきました。 「だって、楽しいんだもん」  子ぎつねは、母さんのちゅういなんてそっちのけで緑の中を行ったり来たり。チョウをつかまえようとジャンプするたび、まだほそくてかわいらしいしっぽがゆれます。 「まったくもう。しょうがないわね」  あきれ顔でつぶやいて、子ぎつねを見つめていると、小さな足音が聞こえてきました。だんだんとこちらに近づいてきます。 「……かくれるわよ」  きけんを感じた母さんぎつね。子ぎつねをくわえてさっとしげみに身をひそめます。 「ねえ、どうしたの?」 「しっ、しずかに!」  けわしい顔でピシャリとしかられ、子ぎつねも口を閉じました。どうやらただごとではないようです。  しばらくすると、低くて太い男の声が聞こえてきました。 「いたか?」 「いや、逃げられたみたいだ」 「……ッチ。今日は不調だな」
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