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「ただいま!」
ガチャっと当然はじめのドアを開けて見慣れたショートカットが入ってきた。
はじめの姉である佐倉絢音だ。
水色のカーディガンを羽織った制服姿で、今高校から帰ってきたところらしい。
「おかえり」
「何やってるの?」
机の前に座ったはじめの横から絢音は顔を出して、はじめが格闘している相手の紙を覗き込んだ。
「怪盗Aからの挑戦状。ふーん。さっすが謎解き研究会部長さん。顔が広いですねえ」
「顔が広いって、こんな人知らないよ」
「えーでも意外と知ってる人だったりするんじゃない」
「そうかなあ。まあ可能性があるとしたらまっつんくらいかなあ」
「でも松岡くんならAじゃないじゃん。怪盗Mだよ」
「いや、このAは友人Aとかに使う時のAじゃない?」
「えー。そうかなあ。まあいいけど。それで謎解きは解けたの?」
「いやえっとまだだけど。ていうか多分この怪盗Aさんが間違ってるんだ、こんな連立方程式じゃ解けっこないよ」
「うーん、どれどれ」
絢音はすっとその紙を手に取って問題を眺め始めた。
絢音ははじめと二つ歳の離れた姉で現在高校一年生だ。
そして謎解き研究会の元部長でもある。と言ってもとても忙しい生徒会長との兼部だったので、ほとんど活動には参加しない幽霊部員であったけれど。
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