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「これって連立方程式じゃないんじゃない?」
少しの間その問題を眺めていた絢音が言った。
「え、でも」
「大体普通の連立方程式なんて謎解きじゃないじゃない、数学だよ」
「まあ確かにそうだけど、じゃあどうやって……」
「声に出してみたら分かりやすいと思うな」
「声?」
「えっ。ていうかお姉ちゃんもう分かったの⁉︎」
「当たり前じゃん。お姉ちゃんを舐めるんじゃないよ」
「いやなめてはないけどさ……」
絢音は中学校3年間、全てのテストで一位を取り続けた秀才だ。はじめもいつも勉強で分からないことがあれば教えてもらっているし、確かに頭の回転がはじめなんかより数倍いいことは間違いないが、謎解き初心者である絢音に負けてしまうのは少し悔しい。
「とりあえず声に出してみなって」
「うーん。分かったよ」
「えっとくし+お肉が54。葉っぱ−お肉が46」
「もうちょっとゆっくり、区切るみたいに」
「区切る? えっとくし+にくが54。はっぱ−にくが46」
「どう?」
「いや、どうって言われても」
「えー、まだ分かんないのー? 鈍感だなあ、はじめは」
「そんなこと言ったってさあ」
「ほらもう一回。式の左側のイラストだけ読んでみたらいいよ」
「ええっ。くしとぶた肉?とはっぱ」
「豚かどうか分かんない見ただけじゃ分かんないでしょ」
「うう、くしと肉とはっぱ」
「もう一回ゆっくり」
「くし、にく、はっぱ」
「何回も繰り返して」
「くし、にく、はっぱ。くし、にく、はっぱ。くし……。あっ」
繰り返して自分の耳から入った言葉ではじめの頭の中に何かがピンとひらめいた。
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