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──いつも通りに目が冷めた。
瞼を開くな。今日はアレだ。もう肌で分かる。
遮光率97%とやらがウリのアイマスクを着けたまま、俺は手探りで枕元のブツを掴んだ。
プラスチック製のそいつと共に、分厚い布団を頭まで被り、一片の隙間も無い事を手探りで確かめる。
そこでようやく俺はアイマスクを外し、視界を確保できる最小限だけ、僅かに目を開く。
布団に引きずり込んだ目覚まし時計。
21:55。
今日もアラームが鳴る5分前。寝覚めも悪くない。健康だ。
誰が何と言おうが健康なんだなぁドちくしょう。
やっぱり今日はアレだった。
布団の中で、光ってもない液晶の表示が見えるなんてのは常識だが……眩しくって目が痛え。
もう一度アイマスクを着け直して、枕元の全視界遮光サングラスを掴んで布団の中で着け換えて、それからようやく一日が始まる。
洗面所じゃあ、この水泳ゴーグルみたいなサングラスを着ける訳にもいかない。
流石に水回りの窓は地道に目張りした。敷金礼金なんざ言ってる場合か。今時どこだってやってるさ。
目張りから染み出す光を尻目に、昔ながらのLEDを点灯させると、何だか心からホッとする。
今日は一段と顔が痒い。
毎日アイマスクだのサングラスだの密着させられて、かぶれるわガサつくわ汁が出るわ……ステロイド軟膏ももっと強めのを処方してもらわないと、そろそろ焼け石に水だ。
サングラスがズレてないか再確認して、さあ出勤だ。いつもの深夜勤バイトだ。
ほんの一瞬だけ空を見て、忌々しいアレを探してみた。
今日は……大体4つくらいか。
星粒サイズの太陽ども。
光の方向なんてもう分かるもんか。全部探してたら目玉が焦げちまう。
「日食観測大歓迎」とか謳ってるこのサングラスも、アレだけは直視するなと注意書きに書いてやがる。
残念ながら今夜は快晴。見渡す限りに「真っっっっ青」な空が広がってやがる。
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