シュレディンガーの彼女

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シュレディンガーの彼女

「さて、問題。量子力学において『状態は確率でしか表せず、観測者によって決定される』ことを説明する思考実験ってなーんだ?」「………………………………うん?」  何やら小難しいなぞなぞを出す彼女を尻目に、僕は意味もなく冷蔵庫から取り出した牛乳を、電子レンジに入れて温めようとしてみたら、彼女が僕の足をがっしりと掴んできた。 「正解はー、どぅるるるるるるー、でん! 『シュレディンガーの猫』でしたー」 「シュ、シュデ、……なんだって?」 「『シュレディンガーの猫』」  言って、彼女はソファーに横たわり、僕と一緒に観るハズだった映画のパンフレットを嬉しそうに眺めていた。というか、何で勝手に観に行っちゃうかな。まぁ、観ちゃったものはしょうがないけどさ。なんていうかさ……。なんていうか……さ。ねぇ? 「……で、どんな内容だった?」  とりあえず彼女の話を聞いて鑑賞した気に浸ってみる事にする。 「えとねー、箱の中に猫とガラス瓶と金槌とガイガーカウンターが入ってるんだよ!」 「……それ、たぶん『シュレディンガーの猫』の実験内容だよ、ね?」  箱の中に猫とか金槌とか。どんな物騒な実験だよ。元よりガイガーカウンターって何だ。能力値を測る計測器の類かな? 「そうだけどー、ちょっとは映画の内容だよ。この『シュレディンガーの猫』を描写する事によって、時間を飛び越える理屈が『量子力学的なタイムマシン理論』だってことを示唆してるの」  ……えと、この会話は約一分三十秒くらいだから、実際に牛乳を温めてたらちょうど良かったかも。それより十秒遅かったら膜張っちゃうんだよね。あれおいしくないし。……と、閑話休題にして、 「楽しかったなら良かったけどさ」  観てないけどなー。 「ねぇ、過去に戻れたら何をしたい?」 「うん? とりあえず……」「一緒に映画を観るとかナシで」  うっわ、めんどくせー……
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