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その日は母親の説得によって、なんとか父親をなだめられた。
てんまは往斗に送られて家路に着く。
数ヶ月後、二人は結婚することになる。
父親も理解し、てんまの両親もあっさりと承諾した。
――ひとつの生命が生まれるのだから
天河さくら 〇歳
てんまの旧姓。桜井から一文字取って、さくら。
彗斗とさくらは本当の兄妹のように仲が良かった。
しかしてんまは、生まれつき身体が弱く、さくらを産んだ五年後、二十三年の命を全うする。
葬式に大勢の人数が参加した。
それほど、素敵な人なのだ。
――ぽとり。
アニキが泣いているのを初めてみた。
# #
――六年後。
天河彗斗 十八歳。
高校三年生。
とある夏の日。
「さくらー。勝手に入ったらダメだろー」
玄関から懐かしい声がする。
「へ、さくら?」
まさか。
この女の子。
てか、この声は。
「おう。お邪魔するぞ、彗斗」
「――何しに来やがった、アニキぃ!」
天河往斗 二十四歳。
社会人。
一児の娘を持つ父親になって、少しはマジメになったが、やはりバカはバカだ。
義姉さんの葬式以来だな。このキリッとしたアホ面を見るのは。
「よし! じゃあ今から、さくらを交えての緊急家族会議を始めまーす!」
「わー! ぱちぱちー!」
アニキのピースサインを合図に、さくらが拍手をする。
ぱちぱちー!――じゃ、ねーよ!
「ちゃんと説明しろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
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