第10話 バグベア

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第10話 バグベア

 今俺は冒険者ギルドにきている。  朝の混む時間は避け、掲載された依頼書を見ている。  するとライオンラビット討伐依頼が目に入った。  冒険者レベル、討伐個体数不問。達成期限なし。 (ほう、誰でも受けることが出来て達成期限の制限もない。これはいい)  ライオンラビットの肉は美味しく、毛皮は高く買い取ってもらえるようだ。  依頼書を手に持ち受付に向かう。  すると後ろから声を掛けられた。 「おい、坊主。その依頼は厳しいぞ」  振り向くとベリーショートでコンサバな、24~5歳の角刈りのお兄さんが居た。 「えっ、どうしてですか?」 「まだ新人だな。ライオンラビットは臆病で素早いんだよ。弓を構えた瞬間にはもうどこかに逃げていないのさ」 「そんなに早い?」 「だから『達成期限なし』になっているのさ」 「そんな~。でも捕まえられる、人もいるんでしょ?」 「だが罠をしかけても中々掛かることはない。だから報酬が高いのさ」 「そうなんですか。ガッカリだな」 「あはは、そうショボくれるなよ。もしやるなら、他の依頼と合わせて受けるのも良いぞ」 「そうか。ライオンラビットは駄目でも、他の依頼で稼げばいいのか」 「そう言うことだ。期限があれば複数依頼を受けることも可能だからな」 「相変わらずコンラードさんは面倒見が良いですね」  俺担当の受付のアリッサさんが言った。 「あはは!新人は何も分からないから、誰かが教えてやらないと。ほっておくと死んじまうからな」  どうやら新人の面倒を見ているらしい。 【スキル・鑑定】簡略化発動  名前:コンラード  種族:人族  年齢:25歳  性別:男  職業:剣士  レベル:32 「俺でも出来そうな依頼はないでしょうか?」 「そうですね、Eランクだと常時依頼のゴブリン討伐、薬草採取くらいでしょうか」 「街中の依頼もあるだろう」 「街中ですか?」 「あぁ、街の外の依頼ばかりだと危険が多からな。街中の依頼は安いが危険が少ない。孤児達や12歳くらいの子供たちが受けるのに丁度いいのさ」 「そんな依頼もあるんですね」 「ま、1件300円くらいだがな」 「う~ん、それだと。やっぱりゴブリン討伐、薬草採取を受けることにします」 「まあそうだな。気を付けて行って来いよ」 「はい、ありがとうございます」  依頼書を受付に出そうとしたら、 「ゴブリン討伐、薬草採取は常時依頼がでているから、依頼書は後からでいいのよ」  と、アリッサさんに言われた。 「では、行ってきます!」 「いってらっしゃい!」  俺はアリッサさんに手を振り、ギルドを後にした。  町の外に出て森に入った。  トロールを倒してからレベルが上がっていた。 「ステータスオープン!」  名前:エリアス・ドラード・セルベルト  種族:人族  年齢:17歳(58歳)  性別:男  職業:防御魔法士  レベル:7  HP 55→80  MP 105→130  筋力  22→31  攻撃力 22→30  防御力 42→58  知力  52→67  器用さ 22→31  素早さ 42→53  運   52→61  EXP  0/100  状態:良好 【スキル】  生活魔法(火・水・氷・風・光):LV1  世界の予備知識:LV1 【ユニークスキル】  異世界言語  鑑定  時空間魔法ストレージ(カスタマイズ可能):LV1  発展スキル:収納防御:LV1 【メンタルスキル】  沈着冷静:LV1  高速思考:LV1  魅力(人の心を引きつけ夢中にさせる力。発動しないこともある) 【加護】  女神ゼクシーの加護  愛し子  防御力と知力の伸びが他より良い。  高速思考で考えストレージの防御技を使ったからか?  その系列の能力を使うと伸びやすくなるのだろうか。  今後の課題だな。  職業、防御魔法士てなんだ?  そしてストレージの防御技を俺は『収納防御』と名付けた。  俺は森の中を歩き薬草や果物を探した。  せっかくストレージがあるのだ。  売れるものや食べれるものは見つけておかないと。  そして森の中ほどにブルーベリーの木が密集しており、たくさんブルーベリーが生っていた。 「おぅ、これは大量だ!」  俺が夢中になってブルーベリーを採っていると、何か争う音がした。  小走りに音のする方に近づくと魔物と冒険者が3人居た。 【スキル・鑑定】簡略化発動  名前:バグベア  種族:熊型の魔物  性別:オス  レベル:22  冒険者3人は女性のようで剣士、狩人、魔術師のようだ。 【スキル・鑑定】簡略化発動  名前:オルガ  種族:人族  年齢:19歳  性別:女  職業:剣士  レベル:17 【スキル・鑑定】簡略化発動  名前:ルイディナ  種族:人族  年齢:21歳  性別:女  職業:狩人  レベル:16 【スキル・鑑定】簡略化発動  名前:パメラ  種族:人族  年齢:17歳  性別:女  職業:魔術師  レベル:17 「「「 グワ~~~!! 」」」  2mくらいあるバグベアが2本足で立ち威嚇する。    狩人が弓を打つが硬い毛皮に覆われ刺さらない。  魔術師が風の魔法を放ち、そのすきに剣士が切りかかる。  先ほどからそれを繰り返している。  だがいつまでも、それは続かなかった。  狩人の弓がバグベアの目に刺さった瞬間、痛みのあまりバグベアが右手を払った。  その払った手が剣士の左手をえぐったのだ。 「「「 きゃ~~~っ!! 」」」  剣士の声が響く。  剣が飛ばされ、横に倒れた。  魔術師と狩人が援護をするが、剣士は動けないでいる。 (駄目だ、やられる)  冒険者は魔物を倒し報酬をもらうのが仕事だ。  そのため、助けに入ったつもりでも、横取りと思われることもある。  だからむやみに助けにも入れない。 (でも死んでからでは、助けられない。だから…)  俺はロングソードを抜き、生活魔法の風を真空状態で剣に纏うようにイメージした。 「助太刀します!」  うずくまったオルガは、バグベアの右手が大きく振りかぶるのを見た。 (あぁ、もう駄目。やられる)  だがいつまで経っても衝撃は来なかった。  目を開けるとそこには美形で黒髪、黒い瞳の少年。  なぜか人の心を引きつけにさせる、雰囲気を持つ少年が立っていた。
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