第11話 収納防御

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第11話 収納防御

 間一髪で間に合った。  バグベアと剣士の間に入り、左腕にストレージを(まと)い防いだのだ。  俺のストレージの使い方は特殊だ。  他にスキルがない分、工夫しないと強くなれない。  ストレージは生き物をできない。  これを利用し部分的にストレージで(おお)うのだ。  そして物理攻撃は受け止めて衝撃はする。  これならどんな攻撃も防げる。  だが欠点は異常に魔力を消耗することと、部分的にしか纏えないことだ。    MP130⇒125⇒120⇒115⇒110⇒  今の魔力量では続けて纏うと、30秒も持たない。  立ち上がったバグベアの柔らかい腹に風を(まと)った剣を刺す! 「「「「 グゥォ~~~~ン!! 」」」」  苦しさのあまりバグベアは両腕の爪を振り回す。  ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!  爪を受けるたびにMPが減っていく。  MP110⇒105⇒100⇒95⇒90⇒85⇒80⇒75⇒  右手で剣を押し込み左手で、ハエ叩きのようにバグベアの腕をいなす。 (やばい、やばい、やばい)  俺は焦った。  収納防御は攻撃を防ぐことは出来るが、それだけだ。  MPが無くなったら終わり。  俺が防いている間に誰か攻撃してくれればいいだが。  後ろを見ると剣士は左腕の傷のためか、気を失っている。  剣士が逃げてくれないと、バグベアと剣士の間にいる俺は動くことが出来ない。  狩人は弓矢切れ、魔術師はMP切れなのか立ちすくんでいる。  魔法?MP?そうだ!  MPを見るとMP70⇒65⇒60⇒55⇒50⇒  出来るか俺?  俺は腹に刺さっている剣を右手で持ち、生活魔法:火で青い炎をイメージし剣伝いに流し込んだ。 「「「「 グワォ~~~~ン!!! 」」」」  バグベアは苦しみだし肉の焼ける臭いが立ち込め、両腕を目茶苦茶に振った。  そして剣を持つ手が異常に熱い!  「あち、ち、ち、ち、ち、ち!」 「「「「 魔法剣!! 」」」」  狩人と魔術師が何かを言っている。  一気にMPの消費が激しくなった。  MP50⇒40⇒30⇒20⇒    バグベアの動きが散漫になった。  このすきに俺は一旦距離を取り、ストレージからマジックポーションを出して飲んだ。  ゴク、ゴク、ゴク。  体が青白く光りMPが10回復した。  その時だった。  「「「「 パキッ!! 」」」」  剣が溶けて折れたのだ。  【スキル】世界の予備知識が教えてくれえる。  青い炎になるのは温度が約10,000℃から、そして剣である鋳鉄は1,200℃程度で溶けます。  今さらですか。  バグベアはうずくまり、苦しそうに泣いている。  お腹の中で鋼が溶け内臓が焼かれているはずだ。  可哀そうだがMPがもうなく、楽にしてやれる(すべ)が俺にはない。 34750247-7b81-43c8-a163-2d109f2801d4  俺は剣士の脇の下に手を入れ引きずり、そこから離した。  ストレージからハイポーションを出し、腕の傷にかけてやった。  徐々に肉が盛り上がり、治っていく。  不思議な光景だ。  まるで巻き戻しを見ているようだ。  「クゥ~~~~ン」  そして段々とバグベアの鳴き声は小さくなり、ついには動かなくなった。 「大丈夫ですか?」  俺は狩人と魔術師に声をかけた。 「バグベアは死んだの?」 「えぇ、死にました」 「オルガ、しっかりして。起きて」  狩人が剣士に声を掛けている。 「うぅ~~~ん」 「目が覚めた?オルガ」 「私は…」 「彼が助けてくれたのよ」 「えっ」  そこには気を失う前に見た黒髪、黒い瞳の少年がいた。  私は身を起こし、お礼をお言った。 「ありがとう、助かったわ」  バグベアにやられた左腕を見ると、防具は引き裂かれてはいるが腕は治っていた。 「これは?」 「彼がハイポーションで直してくれたのよ」 「えっ!」  ハイポーションは高い。  1本5,000円はする。  冒険者のE、Fランクなら1日3,000円くらい稼げれば良いほうだ。  そして宿屋と食事代に消えていく。  冒険者が稼げるのは魔物を討伐し、素材を売ることだ。  だが毎日は討伐できない。  それを見ず知らずの他人に、ポンと使うなんて。  あぁ、なんて崇高な人でしょう。  この人の見る視線の先を、私も一緒に追っていきたい。  気が付くと私は両手を胸の前で組みながら話している。 【スキル】魅力が発動していた。
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