第16話 パーティー仮加入

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第16話 パーティー仮加入

『なごみ亭』で夕食を食べていると、どこかで聞いたことのある声がする。  振り向くと『紅の乙女』のメンバー3人が居た。 「あら、エリアス君。ウフッ、来ちゃった」 「エリアスきたわ!」 「エリアスっち、きたぞ~」  いつの間にか、オルガさんは俺のことをエリアス君。  ルイディナさんはエリアスと呼捨て。  パメラさんなんてエリアスっち、になっていた。 「ご一緒してもいいかしら」 「はい、どうぞ。一体どうしたんですか?」 「丁度、前の宿の契約が今日までだったから、この宿に泊まることにしたのよ」 「そうだったんですね」 「明日からの予定はどうなってるの?」 「俺はまだFランクですからね。ゴブリン討伐、薬草採取がメインですよ」 「なら私達とパーティーを組まない?私達はEランクだから、Dランクの依頼までなら受けれるから依頼の幅が広がるはずだわ」 「ええ、それも良いですね」 「それに攻撃専門の人が欲しいて、言ってたでしょ」 「まあ、そうですね」 「エリアスっちがタンクで防いでる間に、オルガが攻撃でしょ。私とルイディナが援護をすれば完璧よ」 「そうね、パメラ。やはり前衛は2人いないとバランスが悪いわ」 「でも今までだと女の剣士が1人でいるわけなくて、かと言って男の人を加入させるのもね~。でもエリアス君ならいいかな?て」 「信用してもらえる、て事ですね。嬉しいです」 「では加入してもらえるの?」 「う~ん、そうですね」 「ねえ、どうなの?」 「ではお試しと言うのはどうでしょう」 「「「 お試し?? 」」」 「はい、うまくやっていけるのか実際に参加して試すのです」 「それは良いわね。では明日からでいい?」 「えぇ、お願いします」 (『紅の乙女』と言う名前のパーティーに入るのもな~、とは言えないし)  翌朝、俺達4人は冒険者ギルドに向かった。  3人が居るのでいつもより早い時間に出たが、こんなに混んでいるとは。  壁の依頼書を見ると違いはあれど、討伐か採取の依頼に分かれる。  討伐は金額が高くなるが危険が多く、採取は危険は少ないが金額も少ない。  危険とお金のラインをどこに引くかだ。 「ねえ、エリアス君。これなんかどう?」  オルガさんが依頼書を指出す。 「ウィルム討伐。蛇の魔物。皮採取。状態により1匹3,000円~」 「う~ん、良いんじゃないかな?」  俺にはどれが良いのか、なんてわからない。  きっとオルガさん達もそうなのだろう。  まずは受けないと。 「それにしましょう」  依頼書を片手に受付に行こうとすると、コンラードさんが居た。 「コンラードさん、お早うございます」 「あぁ、この前のあんちゃんか」 「俺の名はエリアスです」 「わりい、わりい。エリアス君だね。どうしたんだい、可愛い子を3人も連れて」 「はい、この人達のパーティーに仮加入したんです」 「仮加入?」 「お試し、てやつです」 「あははは!お試しか。そりゃいい。『紅の乙女』も前衛が入れば大きな戦力になるからな」 「コンラードさん、彼女たちを知っているのですか?」 「もちろんだ」 「もちろんよ、エリアス君。コンラードさんは面倒見が良くて、ギルドで知らない人はいないわ」 「俺はこの街に来たばかりだから、知らなかったのか」 「まあ、頑張れよ」 「はい、ありがとうございます」  ウィルム討伐はDランクの依頼だ。  Fランクの俺では受けることは出来ない。  だがEランクの『紅の乙女』なら、1つ上のランクなので受ける事が出来る。 そして俺が『紅の乙女』に入るとギルドの担当は『紅の乙女』担当の人になり、アリッサさんではなくなってしまう。  なにか他の女に乗り換えたようで、悪い気がする。  オルガさんが依頼書を片手に受付に向かう。 『紅の乙女』の担当はコルネールさんと言う女性で年は20歳くらい。  髪は赤みがかった金色で、ミディアムでスポーティなストレートだ。  コルネールさんの隣がアリッサさんだ。  一言挨拶をした方がいいのか迷っていると、アリッサさんから声を掛けられた。 「エリアス君。ちょっといい?」 「はい、実は一時的ですが『紅の乙女』に加入することになりまして」 「そうなの。君もソロだと無茶しそうだから、チームに入るのもいいわね」 「はい、自重します」 「それから嬉しいお知らせよ。ギルドランクがFからEに上がったわ」 「えっ、Eにですか?でも俺、登録したばかりですよ」 「トロールやバグベアを、人の力を借りてとはいえ倒しているんだもの。当然よ」 「おぉ、ではDランクの依頼も受けれるんですね」 「そうよ、だから今度は私の方で受付してね」 「えっ????」  さっきまではFランクだったので、『紅の乙女』に加入しないとDランクの依頼は受けれない。  でも今は『紅の乙女』と同じEランクだから、俺でもDランクの依頼は受けれるようになった。  だから俺メインに依頼を受ける時はアリッサさん、『紅の乙女』メインならコルネールさんで受付してほしいと遠回しに言われている。 「分かりました。今後はコルネールさんと交互で受けようと思います」 「そう、分かってくれて良かったわ」  別れ話をしたら別れられない様に仕向けられ、雁字搦(がんじがら)めにされた気がする。  何かちょっと怖いものを感じる。  あぁ、そう言えばアリッサさんに渡すものがあった。
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