第95話 これからの為に

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第95話 これからの為に

 はあ、はあ、はあ、はあ、はあ  グリーンドレイクとの戦いは終わった。  俺は倒したグリーンドレイク2匹と、2つあった卵を収納した。  生命力が弱い卵なら、ストレージで収納可能だった。  そして周りに落ちている、遺留品を拾った。 「これから、どうする」  ポツリと俺は言った。 「そうね、きっと村は大変なことになってるわよね」  オルガさんが言えば、ルイディナさんも答える。 「帰って村の立て直しから、始めるのね」 「なんだか帰りたくないな。みんなもう居ないもの」  パメラさんが、しんみりと言う。 「エリアスっち、はどうしたいの?私は帰りたくない。私達に良くしてくれた人達はもういないのよ。メイドのアーネさんも…」 「そうだね。でも俺は領主だから、その責任を背負って村の復興を…」 「だから辛いのよ。死んだ人は帰ってこない。そして壊れた家を建て直しながら…。元の生活になんて、もう戻れないわ」 「それは、そうだけど…」 「あなたが戻っても何もできない。私達にはなにも出来ないのよ」  パメラさんの言う事も分かる。  やっと村の人達と打ち解けてきたと思った矢先に、こんなことになるなんて。  村に戻っても、俺に出来ることはみんなを励ますことしかできない。  なんの意味があるだろう。  何もできない領主だ。 「領主なんて、俺には無理だったんだ。何もかも捨てて、この国を出たい」  エリアスは村での惨事を、受け入れることが出来なかった。  そして自分を責めた。   「エリアス君がそうしたいなら、それでもいいわ」 「私もよ、エリアス。好きにしなさいな」 「オルガさん、ルイディナさん」 「私も、その方が良いと思う。私も村には帰りたくない」  パメラさんもアーネさんが亡くなったことを、今は受け入れられないようだ。 「それなら冒険者ギルドに寄って行こう。俺達にも出来ることはある」 「グリーンドレイクの報奨金ね?」 「いいえ、パメラさん。グリーンドレイクもドラゴンの端くれです。素材は高く売れるでしょう」 「それを売って、他の国に行くの?」 「報奨金は、これからの生活費に。素材のお金はグリーンドレイクに襲われた、人や村にギルド経由で分け与えてもらいます」 「それも良いかもね。そうすればヴィラーの村にも復興のお金が入るものね」  パメラさんやアーネさんも頷く。  俺達は冒険者としてのレベルも上がり、前のようにお金に執着しなくなっていた。  なぜなら稼ぎたければ魔物を狩ればいい、そう思えるくらい自信が付いたからだ。  収入の当てがあれば、気持的にも余裕ができる。   「ではに行きましょうか」  パメラさんに頼み空間結合魔法で、ウォルド領の近くまで飛んだ。  そして冒険者ギルドの中に入った。  受付のマリサさんに、ギルドマスターに会いたいことを伝えてもらった。 「どうぞ、ギルマスがお会いになるそうです」  そう言われ2階のギルマスのドアを叩く。  トン、トン 「どうぞ」  中から声がした。  俺はドアを開け、中に入った。 「どうぞ、座って。で、どうしたの」  ギルマスのイノーラさんの隣にパメラさんが座る。  そして前のソファに、俺、オルガさん、ルイディナさんが座った。 「ドラゴンを倒しました」 「えぇ~~!!!た、倒したの?本当に」 「本当です。グリーンドレイクは1で、マジック・バッグに入っています」 「どこで見つけたの?それよりも、どうやって倒したのかしら」 「ウォルド領の街道から中に入り、魔物を探していたら鳴き声がして、大きな魔物が飛んで行ったのです。ウォルド領から北に、なにかありますか?」 「そうね、確かヴィラーと言う小さい村があったはずだわ。まさかそこも…」 「それはわかりません。俺達は、その後をつけて行きました」  えっ!後をつけて行った?飛んでいるドラゴンの後を。 「1時間くらい走ると一際高い岩の山脈があって、その上をドラゴンは目指して飛び始めました」  1時間走った?ドラゴンと同じ速さで? 「山の中腹まで登ると、平らな場所がありドラゴンはそこにいました」  何を言っているの?  山の中腹まで登った? 「探索はここまでにして、一度報告に戻ろうと思ったのですが」  岩の山脈と言えばバーク山脈のことね。  あんな高くて岩だらけの山の中腹に、ドラゴンはいます!て言われてもね。  どうやって登るのよ! 「この機を逃すと、次の機会はないかもしれないと思い戦ってしまいました」  そうよ、それでいいのよ。  戦ってくれて良かった。  あなた達に依頼して良かったわ~。 「それから周りに落ちていた宝石や武器などの、遺留品を持ち帰りました。持ち主のご家族が分かれば、返してあげてください」  え、欲がないのね。  あなた達の物で良いよの。 「それからドラゴンを出したいのですが。誰も近づかない、広いところは無いでしょうか?」  あぁ、買取ね。  ドラゴンの粗材を扱えるなんて、このギルドの自慢になるわ。 「格闘練習場なら、今の時間使えるわ。そこに行きましょう」  そう言われ俺達は1階にある、格闘練習場に向かった。  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  読んで頂いてありがとうございます。
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