イベリス side 亜貴

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塾の扉を開くと早々に同じ塾講師の霧島蒼生がこちらに不気味な笑みを浮かべて近寄ってきた。 「亜貴。可愛い子の見送りかよ。浮気かー」 「違う。元教え子だ」 蒼生は俺が知る限り遊び人。 彼女に近づかれるのが嫌で教え子だと強調し続けた。 何度か言うとやっと諦めて悪い笑みが消えた。 「でも可愛いよな。彼氏とかいるのかな」 「絶対近づくなよ」 「なんで? 人の恋愛は自由だろ? それとも亜貴はやっぱり浮気……」 「蒼生にかかると傷つきかねない。教え子でも守りたいと思うのは普通だろ」 事実は事実。 でも心のどこかに黒いモヤがかかる。 「はいはい。わかりましたよ。でも今日、雨止まないらしいけど?」 「蒼生、車だろ? 送ってくれよ」 「俺今日は早くあがるから亜貴の帰りには合わないよ」 手をひらひら振って教室に消える蒼生を見て顔が引きつる。 時々、彼には腹が立つ。 いつものように茉莉に連絡しようとして携帯を出す。 その携帯の画面には先ほど交換した瑠華ちゃんのアイコンがある。 一度は指が止まるがすぐに画面を変えて茉莉にメッセージを送った。
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