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俺は男としても、一人の塾講師としての立場も失うほど心が欲していた。
「瑠華が、好きに……」
最後まで言うつもりだった。
でもそれを遮ったのは瑠華だ。
いきなり体に抱き着いて離さないとでも言うかのように手に力を入れているのがわかる。
瑠華の匂いが俺を誘う。
瑠華の熱が俺の熱をさらに増してくる。
「先生。亜貴って言っていい?」
「うん」
背中に手をまわしながら彼女の肩に当たるように頷いた。
すると彼女は少しだけ体制を直して俺の顔の横に、すぐそばに顔を持って来る。
「亜貴……して?」
全身がうずき始めて脳が誤作動を起こしたように狂うように頭を瑠華の言葉でいっぱいにする。
それでも最後の確認をしたかった。
最後の人間としての質問を。
「俺、恋人がいるよ……?」
「それでもいい。私には亜貴しかいない。だからお願い」
怯えるように、寂しがるように、悲しむように彼女はか細く俺にささやく。
もうすることは一つだ。
俺と瑠華の願望を達成すること。
それしか頭に残らなかった。
すぐ近くにある唇に口づけを落とすともう止まらなかった。
お互いが求めあって体制も変えて今までで一番幸せな時間を一秒一秒感じていく。
自分のことも忘れて二人の時間は過ごした。
彼女の初めてを奪ったことも知った。
それでもその事実に嬉しさを感じてしまう最低な心さえあった。
もう後戻りをしない。
心に闇を抱えてでも、悪になっても瑠華を離したくなかった。
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