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あの日、あの場所に友華が行かなければ。
いや、友華がこんな目に遭わなければ。
あの日から、暗くて汚いあの日から友華は変わった。
自分も私も忘れ、物も人も何もかもが敵で、暗闇なんて死のような恐怖。
夜になれば悲鳴。雨が降れば大きな音がする。
壁やドアはもう見せられない。
限界なんだ……
そう知った時、私も全てを捨てた。
大好きだったこの街。
仲の良かった友。
親切だった近所の人。
そして好きだった先生。
捨てたら何か変わると思った。
でも捨てたところで変わらない。
でも一つだけわかったことがあった。
なぜ友華があんな状態になってしまったのか。
どうして私たちの未来が奪われたのか。
吐き気がする。
握り締めた手はもう痛くない。
息も瞬きも忘れ、声も力も出ない。
もう助けなんてないんだ。
救いの手なんて存在しないんだ。
だって……
信じていた人が私から消えたんだから。
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