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「まぁ、こんな感じで漫画を描きます。ええと、何か質問ありますか?」
「いいや、特にない。だが漫画制作の様子が分かったのは良かったよ。やはり君は絵が上手いね」
「あ、いえ、いや、ありがとうございます、」
ほんのりと頬に朱を注いだ花嵐は嬉しそうにペコペコと頭を下げる。
……それにしても、だ。
「本当に完全デジタルなんだね。アナログの方法にも興味があったんだけど」
やはり私の中の"漫画家"のイメージはデジタルよりもアナログだ。
つけペンで漫画を描く所も見てみたかったと思う。
「あー、昔はアナログでやってたんで一応道具はありますよ。ええと、ど、どこにしまったかな? 探しますね」
「ああ、悪いね」
どうやら本棚は収納棚の役目も果たしているらしく、彼は突っ込んだ蓋付きボックスをあれやこれやと開けていく。
それにしても、蔵書が多い。背表紙を見ると漫画が圧倒的に多いのだが、画集やポーズ集など仕事関連のものもちゃんと揃えられている。
その一角に、他とは違って綺麗にディスプレイされたコーナーがある。そっと近づいて見てみると、そこには私の小説やインタビュー記事が載った雑誌が並べてあった。何かの特典にしたブロマイドもちゃんと写真立てに飾ってある。
……ああ、どうしよう。嬉しいな。
胸がドキドキとして身体が熱くなる。こんな風になるのは随分と久しぶりだ。
胸を押さえて深呼吸をしていると、足元の一番下の段にスケッチブックが乱雑に押し込まれていることに気がつく。
これは、あれだろうか? デッサンとかクロッキーとかいう絵の練習帳かな?
一冊手に取り、表紙を捲って──呆気に取られる。
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