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路地裏の喫茶店。
店に入るといつもの席に霙が座っているのが見えた。
例によってあの不細工の姿はなく、少しだけイラッとする。
マスターに声をかけてからソファに座ると、霙は申し訳なさそうに口を開く。
「こんにちは、天道先生。えーと、実はハナちゃんが、」
「どうせまた遅れそうなのだろう? 今日はなにかな? 犯罪にでも巻き込まれたかな?」
「コンビニ強盗に遭遇したことがあるとは前に言ってましたがね」
「それは……、小説のネタになりそうだね」
そんな取り留めのない話をしているとマスターがコーヒーを運んでくる。
小さなクッキーが2枚添えられており、これはどうやら私だけへのサービスらしい。まぁ美しい私にとってこんなことは日常茶飯事だ。
「ああ、先生。どうやらもう直ぐ着くようですよ」
ケータイを見ながら霙が言うので、扉の方に視線をやる。
早くやって来て、その美しくない顔を私に見せてみろ。
お前には言いたいことが沢山あるんだ。
チリン、とベルがなって扉が開いていく──。
ああ、胸が高鳴って苦しいなぁ
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