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「み、見えてます、カリンさんは、きょ、今日も美しいです」
「視力は正常みたいだね」
擦れ合う唇だが、キスなんてしてやらないしさせてやらない。
スイッと身体を離すと、"あっ……"なんて物足りなさそうに呟かれたが気がつかないフリをする。
「そうだ、私は美しい。なのにお前は美しい私の望みを"無理"だなんて無粋な言葉で否定する」
「あ、見学の話ですか? いやだって、その……家ですよ? おれの家。カリンさんこそ、本気なんですか?」
……妙なことを言う。意図がよく分からない。
ああ、もしかして──。
「どんなに汚いウサギ小屋でも特別に耐えてあげよう。男の一人暮らしに期待なんて何もしていないよ」
美しい上に寛大だなんて、本当に完璧だ。
だがこの親切心が相手をつけ上がらせたのか、醜男は不機嫌そうに言う。
「やっぱりカリンさんはおれの家に来るのは禁止です」
「はぁ?」
思わず間の抜けた声が出てしまったが、もしかしてこの男は馬鹿なのだろうか? 私がここまで言っているのに何故素直に従わない?
この私が家を訪れるだなんて、泣いて喜ぶご褒美だろうに。
……なるほど、つまりはこういうことか。
「ソータツ♡」
再接近して、耳元で甘く囁いてやる。
「お前がどんな風に漫画を描いているのかが知りたいなぁ。家に招いてくれるよね?」
男の内股に手を添える。ゆっくりとなぞるように上へ上へと滑らせて鼠径部をスリスリと撫でる。
「……っ、カリンさん、」
「私の願いは聞き届けてもらえるかな?」
全く、本当にこの駄犬は欲しがりだ。この私に触れてほしくて反抗したんだな? 躾直してやらないとね。
さぁ、早く"家に来て下さい"と言ってみろ。そうしたら少しだけいい目を見せてやるから。
「~~っ、やっぱり無理です!!」
ドンッと突き飛ばされて唖然とする。
花嵐は無様に前を押さえながら私から距離を取ると、唇を血が滲む程噛み締めた。
一体何だ? そんなに私を家に招きたくないのか? だがまぁそんなの知ったことではない。
「お前、私に恥をかかせたな。だがお前が何をしようがしまいが、昔から私の望みは叶わないことの方が少ない。……謝るなら今だぞ?」
花嵐はひゅっと息を飲んで何やら震えているが、この私に叶えられない望みなどそうはないのだ。
覚悟しておけよ?
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