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「えっと、とりあえず飲み物を用意するのでテキトーに座ってて下さい」
居間にあたる場所にはシンプルなローテーブルが1脚と座椅子が1つ、そしてテレビがあるだけ。
物が少なく意外にも綺麗にされているが、部屋の角に積み上げられた洗濯物が生活感を滲み出している。
座椅子に座りぐるりと部屋の中を見回すとどうやら2LDKといった所だ。閉じられた2つの戸が気になって仕方ない。
「……カリンさん、家捜しとかしないで下さいね、」
「失礼だな、ちゃんと座って待っているじゃないか」
「そうですけど、何か時限爆弾を抱えた心地です」
「ふーん。そうな風に言われたらその期待に応えたくなってくるね」
「駄目ですからね?!」
この反応、見られたら何かまずいものがあるんだな。面白そうだから後で詳らかにしてやろう。
「インスタントのコーヒーですが、どうぞ。あとケーキ、ありがとうございます」
来客を想定していないのか随分と粗末でちぐはぐな食器で出されたが、それが彼らしくて嫌な気持ちはしない。
「そのケーキ、口に合えばいいけど。くどすぎないものを選んだつもりだ。それとも君はとびきり甘い方が好きかな?」
コーヒーを啜りながら訊ねるも、フローリングに直接胡座をかいた彼はじっとこちらを注視して黙っている。
「もしかして突然訪ねてきたことについて一丁前に怒っているんじゃないだろうね?」
「別に怒ってはないですよ。ただ、その……、」
「要領を得ないな。そんなことより早くおあがりよ。コーヒーが冷めてしまうから」
そう言うと花嵐はフォークを掴んでケーキを一欠片口にする。
「……甘い、美味しいです」
「そう、それは良かった」
そういう素直な所は好感が持てるね。
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