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あたし、朔!
ビシャーンバリバリ!
深夜、俺は雷で目が覚めた、いや、俺に雷が落ちた?死ぬ?その瞬間に考えたことは、愛猫の朔。毎晩俺の左腕を枕にして眠る十四歳の白三毛猫。朔!朔が居ない!雷のせいか?俺はまばゆいばかりの光に包まれている。光?それもどうでもいい、朔!どこへ行った!
ドッスン!
左腕に何かが落ちてきた。朔?いや重い。朔じゃない、ってぇ、人間?髪が長い。甘い匂い。女子?近頃は匂いを嗅ぐだけで痴漢になるらしいぞ?いやそんなこたぁどうでもいい、この子、誰?同級生くらい?女子の腕枕なんて生まれて初めて。本来なら喜べるシチュエーションだろうが、大切な朔がいないことが心配でならない。朔!朔!どこへ行った?そして女子!お前は誰だ?
……
高一の春休み、俺は「一人旅」に出た。
といってもたいそうなものじゃない。
夜行バスに乗って、島根県の雲州大社に向かった。
神奈川県湯河原町から、一人で雲州大社にお参りに行く高校生というのは珍しいかもしれない。本音を言うと、遠くならどこでも良かったが、北海道とか九州は遠すぎて旅費が足りない。
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