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サンライズ出雲の窓は固定式で開けられないけれど、どこからか「夜の匂い」が漂ってくるような気がする。
俺が最後に覚えている停車駅は浜松だ。夜の一時頃だったかな。浜名湖の養殖ウナギたちも眠っていたに違いない。
……
「豆ちゃん豆ちゃん!海が見えるよ!」
ごん。
「いっでぇぇぇぇぇ!」
朔に起こされて立ち上がると、俺はサンライズ出雲のベッドの底で思い切り頭を打った。
「大丈夫?」
なっちゃんが上段から下段を覗き込んだ。なっちゃん、尻尾出てる!尻尾出てる!
しかしムカチク!何が夜行列車だ!夜行バスは座席からトイレまで立って歩けた!
大事なことは一人当たりの「占有面積」なんかじゃない!そういうこと喜ぶのはお相撲さんくらいで、一般人は「頭をぶつけない天井」の方が重要なんだよ!バスの倍以上の料金を取る癖になんちゅう設備だ!何が昭和の香りだ!令和育ちでああよかったよ!
で、朔が言った「海」だが、それは海ではないんだな。宍道湖だ。
「シンジコって何?」
「海にも繋がってるけど、一応、湖だ。お前の好きな『しじみ貝のみそ汁』の具がいっぱい捕れるところだ」
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