夜行列車

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「べべべ弁当まで思いつかなかったんだよぉ、朝ご飯のお弁当なんて」  朔の詰問は容赦ない。 「食事係!『セキニン』と言ったよね!今すぐ『セキニン』取りなさい!」  俺が止める。 「無茶苦茶いうなよ……しかしせめてジュースくらいないもんかな?」 「あ、そういえば飲み物の自動販売機はあったよ!コーラ買って来る」effdbb8f-f983-4c92-84a4-053836bca8cc 「バッカモーン!濃厚カフェオレ砂糖たっぷりハイカロリー風味、今すぐ十本買ってこい!」 「出雲市駅に着いたら駅の売店でお弁当を買うよぉ」 「あたしは空腹に弱いのよぉ」 「だろうな、お前、食べるの好きだもんな。ただ、俺が言うのもなんだが、これが旅行というものだ、多分」 「なに?それ」 「英語のTRABELの語源って、知ってるか?」 「知らない」 「TROUBLE、つまりトラブルだ」 「それがなに?」 「つまり旅にトラブルは付き物だということだ。今の俺たちは、トラブルに直面しているという割には被害が小さい。たかが朝飯、しかも食えなくなった訳じゃない、いつもより数時間遅くなるだけだ」 「ちがうわよ!朝ご飯が遅れるんじゃなくて昼ご飯を早めるのよ!」
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