トラップに気をつけろ

1/15
前へ
/169ページ
次へ

トラップに気をつけろ

「いらっしゃいませー」  俺たちは黙って食券を自動販売機で買う。ちびるがお金を入れて、俺たちが好きなボタンを押す。ちびると俺は普通のカレー。もちろん朔はカツカレーだ。なっちゃんは少し考えた後で野菜カレーのボタンを押した。  朔がふと気づいて言う。 「あれ?ここ店長一人でやってるの?田舎だからかな?」 「あまり田舎田舎言うな。これでも出雲市は『市』、俺たちの住んでる湯河原町は『町』だ。人様のことを、どうこう言える立場にない」  店長は、黙って食券を確認すると厨房に戻り、素早くカレーを盛りつけて戻って来たかと思うと、またスピーディーに厨房に戻って行った。  スピードもサービスのうちだからな、こういう店は。いくら人口の少ない町だからといって、キツそうな仕事だなあ。  まあそんな話は今はいい、さっさと食うか。  俺たちがカレーを半分くらい食べ終えたところで、店長がカウンターに戻って来た。 「へへへ。君たち、家出かい?」 「え?い、家出ってことないですけど。ちゃんと両親の許可取ってます」 「学校は?」 「え、あ、ああ、大学生なんです。今日はちょっと授業をサボって……」
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加