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トラップに気をつけろ
「いらっしゃいませー」
俺たちは黙って食券を自動販売機で買う。ちびるがお金を入れて、俺たちが好きなボタンを押す。ちびると俺は普通のカレー。もちろん朔はカツカレーだ。なっちゃんは少し考えた後で野菜カレーのボタンを押した。
朔がふと気づいて言う。
「あれ?ここ店長一人でやってるの?田舎だからかな?」
「あまり田舎田舎言うな。これでも出雲市は『市』、俺たちの住んでる湯河原町は『町』だ。人様のことを、どうこう言える立場にない」
店長は、黙って食券を確認すると厨房に戻り、素早くカレーを盛りつけて戻って来たかと思うと、またスピーディーに厨房に戻って行った。
スピードもサービスのうちだからな、こういう店は。いくら人口の少ない町だからといって、キツそうな仕事だなあ。
まあそんな話は今はいい、さっさと食うか。
俺たちがカレーを半分くらい食べ終えたところで、店長がカウンターに戻って来た。
「へへへ。君たち、家出かい?」
「え?い、家出ってことないですけど。ちゃんと両親の許可取ってます」
「学校は?」
「え、あ、ああ、大学生なんです。今日はちょっと授業をサボって……」
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