あたし、朔!

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「うわぁい!入ってみたかったんだ、ハンバーガーショップ」 「あー、確かに猫は入れないな」 「あたし、クオーターポウンダー食べたい、だって、肉じゃん」 「猫って本当に肉食なんだな」 「それとコーヒー」 「ちょっとまて、猫にコーヒーは禁忌じゃないか。コーヒーは猫の赤血球を壊して死に至らしめる」 「まあ、猫の体ならそうなるね、でも今の私は人間化しちゃってるから」 「そういうものなのか?」 「豆ちゃんいっつも、家で美味しそうにコーヒー飲んでるじゃん」 「コーヒーは好きだよ」 「いい香りだなー、あたしも飲んでみたいなー、って、ずっと思ってた」 「OK」  いつか猫に戻さねばと思いつつ「人間・朔」を、なし崩し的に受け入れつつある自分が怖い。  と思ったところで、この女子、母ちゃんにどう言って紹介したらいいのだろう?  考えてみたけれど案が浮かばない。もういい。正直に話そう。  俺は二階から朔を連れて階段を降り、キッチンでコーヒーを飲みながら食パンを囓っている母ちゃんに言った。  「おはよう。朔が人間になった」  「あ、そう。かわいいじゃない。学校は?」
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