あたし、朔!

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 駅に行く途中で気づいたのだが、このあたりでは勾玉は結構な人気商品(お土産)らしい。あちこちで売っていた。一個数百円。なるほど。これを買って落とした人がいたのだろう。気の毒なことではあるが、人生がひっくり返るというほどのダメージでもないだろう。  松江の街に着いた俺は、歩いて街を一回りしてみた。それなりに楽しかった。コンビニはあるし郵便局もあるし牛丼屋もあるし、湯河原と大して違わないような気もしたが、銀行は「山陰合同銀行」というごっつい名前だったし、クラシックな日本的街並みも少し残っていた。  ……  旅行から帰宅して最初にやったことは「朔ちゃんお面かぶり」。  仰向けに寝転んで朔を持ち上げ、そのおなかを顔に乗せる。これが「朔ちゃんお面かぶり」。うーん、気持ちいい。むくむくのふわふわ。でも呼吸は出来ない。ほんのちょっとの幸せタイム。 16aaf3ed-c976-4abb-ab7f-b45d383a3709  朔を開放すると、朔は迷惑そうな顔をしながら部屋の隅に行って、毛繕いを始めた。  毛繕いの前に、ちらりと僕のことを鋭い目で見たような気がした。旅行でまる一日会えなかったことがご不満だったのかもしれない。
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