夜行列車

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 乗ってみると、これまた意外にいい。俺たちが切符を買った「ノビノビ座席」というのは、実は「椅子に座る」のではなく「カーペット敷きの二段の床にゴロ寝」をする仕組みだ。 6a3bec1c-5890-4987-bf0d-e3f586baf298(ノビノビ座席、通路) ac937301-707c-4eda-8a37-8d8ce6bada00(ノビノビ座席、下段)  これ、座席や椅子という名前の設備ではないよ、実質的に二段ベッドだよ。  バスの座席と比べると、一人当たりの占有面積が広い。寝転がれるのっていいな。寝返りがうてて、ゆったり感がある。  上段は朔となっちゃん。下段にちびると俺。夜中にトイレに行くとき、女の子の寝顔を覗いちゃマナー違反だからな。それに明日の朝には山陰の風景が見えるだろう。見晴らしのよさそうな上段を二人に譲った。レディ・ファースト。  切符代は高いけど、意外にいいもんだな。「夜行列車」。その響きには、どこかノスタルジックなものを感じる。これが「昭和の残り香」ってやつか?  それにしても謎はクリ目だ。クリ目は迷うことなくこの「サンライズ出雲」を指定した。  熱海駅ホームを滑り出したサンライズ出雲の車窓を眺めながら、俺は、猫という生物の行動範囲について考えてみた。  朔は「真鶴より遠くに行ったことがない」と言った。それは多分、真鶴のリサ先生の所に電車で連れて行ったことを言っているのだと思う(うちの近所でプリモ先生が開業する前までは、リサ先生が掛かり付けの獣医さんだった)。
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