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見つからなきゃ良いんですよぉ。
そう言ってにししと笑った彼女は、ケージに入れられたファントムを見る。
ぐったりと横たわる姿を確認し、大きく頷いた。
「ファントムに手を出されることもなさそうですし。良いでしょ、先輩?」
「勝手にしろ。その代わりこいつの監視は任せるぞ、グラス越しだと視界が悪い」
「やった! 監視は任せてくださいよぉ」
調子の良い彼女に、キースは深く溜息をついた。
ファントムは、普通の人間には視認することが出来ない。
統一バビロニアが誕生したころは、裸眼で視認出来る人間も人口の半分ほど居たと言われている。
しかし、未完成の肉体増強剤の副作用で、視認出来る人間は今や全人口の1パーセント以下にまで落ち込んだ。
臨床実験を十分に行わず、市民に使用を強要し人体実験を行った結果がこの様だ。
とは言え、人間に危害を加える可能性のあるファントムを視認出来ない人が多数居るのは、人間にとっても都合が悪かった。
かつての統一戦争時代に開発されて廃れていった可視ゴーグルに、再び目を付けた。
一方で可視ゴーグルを着けていない少女・モニカは、裸眼でファントムを視認出来る識視者。
全人口の約0.1%しか持っていない彼女のその特異な体質に、キースは強い憧れを抱くと共に不快感を覚えるのだった。
そんな彼の思いなど露ほども気付いていないモニカが、彼の手を見て表情を曇らせる。
「待ってください、先輩」
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