アカデミー

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アカデミー

「……はぁ」 「溜息吐くと幸せが逃げちゃいますよ、レナさん」  アジト。  デスクで深く溜息を吐く私に、気を使ってお茶を入れてくれたメイナード(メイ)はそう口にする。  ゆるい三つ編みが良く似合う彼は、私の眉間に刻まれた皺を指でつついた。  ……分かっている。  こんなのは日常茶飯事だ。いちいち咎めていたら切りがないことは、私自身が1番分かっている。  だけど、我慢にも限界はある。 「ワッフルにはメープルだろ」 「は? アイス一択に決まってるじゃない」 「熱いワッフルにのせたら溶けるだろ、アイスは」 「それが良いのに。これだから坊やは」 「一つしか歳変わんねえだろ!」  テレビ前のソファを占領して、実にくだらない言い合いをしているのはイアンとオリヴィア。  加速する二人の言い合いを、メンバーは困り顔で見ている。  無理もない。  ここにいる中で、彼らを止めることが出来るのは年長者である私だけなのだから。 「メイ」 「どうしました?」 「私、我慢した方だと思うの。貴方はどう思う?」  目が合った彼は、私の問いに同意する。  どこか表情が固いように見えるのは気の所為と言うことにしておこう。  辺りを見回し、手近にあった二枚のカードを手に取る。  重さと硬さは申し分ない。  脳内で軽くシミュレーションしてから投げたそれは、勢いよく回転しながら二人の袖口にサクリと刺さった。  ナイスコントロール。  よし、と手を握れば、驚きで言葉をなくした二人が戦々恐々とした態度でこちらを見た。 「ワッフルには生クリーム一択。何か異論は?」
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