それはたった5センチの変身

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 コツコツ。コツコツ。足音は鳴る。  踵からすらりと伸びるヒールを、ガラス扉に映るのを横目で見ながら、颯爽と歩いて行く。  でも、ヒールは好きじゃない。  歩き難いし、走れないし、靴擦れは痛いし。  でも、あの人が『背の高い人が好き』って言ってたから。  身長を伸ばせないなら、せめて背伸びをする。  たった一瞬で、5センチもあの人に近付けるなら安いもんだ。  『ヒールって大変そうだね』と、あの人が言うので  『そうでもないですよ』と、私は素っ気なく返す。
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