第九章 もう戻れない恋を愛というんだ

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 翌朝、いますぐにでも純白のタキシードを着てチャペルに行きたいとごねる悠を、慎也はやんわりと止めた。 「お楽しみは、もっと後にとっておくものだ」 「じゃあ、明日!」  やれやれ、と彼の頭をくしゃくしゃ撫でて、慎也はその目を真っ直ぐに見た。 「悠のご両親に、ご挨拶に行きたい」 「えっ!?」  とたんに機嫌を損ねる、悠だ。 「ヤだ。僕の結婚に、あんな人たち関係ない!」 「これは、大切なことなんだ」  悠の戸籍をちゃんと久貝の家に移さなければ、正式な結婚とは言えない、と慎也は押した。 「でないと、内縁の夫、ということで私に何かあった時に、相続が面倒なことになる」  また弟が、良からぬ野心を抱かないように、慎也は安全装置を作っておきたかったのだ。 「君と、いずれ生まれる子どものため、だよ」 「うん~」  いずれ生まれる子ども、と聞いて、悠は態度を軟化させた。 「つまり、僕たちの赤ちゃんが困らないように、ってこと?」 「そうだ」  まだ唇をとがらせたままの悠に、慎也は言う。 「私も、命を狙ってきた弟を許した。悠も、同じようにご両親を許してやってくれ」  私に免じて、許してやってくれ。  そこまで言われると、悠も我を張れない。 「解った。僕、お父さんとお母さんを許すよ」 「それでこそ、悠だ」  大人になったな、と慎也は悠を抱き寄せた。
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