第一章 案外優しいじゃん

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 ヤクザで、お金持ちで。 (ちょっぴりオジサン、だよね)  30代後半、といったところか。  18歳の悠の目には、30代はもうオジサンだ。 (そして、結構地位が上の人?)  ぶるり、と悠は改めて震えた。  下手を打てば、闇から闇へ葬られるかもしれない。 (コンクリ詰めで、海に沈められるかも!)  とにかく、この先命がけで振舞わねばならない、ということだ。  冷汗をかいているうちに、フェラーリはマンションに着いた。 (た、タワマン! 億ション!)  怖いよう、と悠はもう泣きそうだった。  こんな大金持ちに会ったのは、初めてだ。  すっかり大人しくなってしまった悠を連れて、慎也は自宅へ入った。  玄関に入って、悠の鼻をくすぐったのは。 「新築の匂いだ」  いい匂い。  慎也が灯りをともすと、悠は歓声を上げた。 「すごい! 高級ホテルの部屋みたいだ!」 「泊ったことがあるのか? そんなホテルに」 「無いけど、サイトでいつも見てるもんね!」  いつか、こんなホテルに泊まってみたい。  そんな気持ちを抱いている、悠だった。
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