第一章 案外優しいじゃん

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「先にバスを使え」 「はーい」 「言葉を伸ばすな」 「はい」  ぱっぱと服を脱いでしまうと、悠はバスルームに入った。 「何これ。これが、お風呂!?」  広い浴場には観葉植物が飾ってあり、大きな大きなバスタブがある。  テレビまで設置してあり、悠はさっそく点けてみた。  音楽番組を流しながら、シャワーを浴びる。  上品な香りのシャンプーや石鹸で、体中を洗う。  バスタブに浸かり、ジェットバブルで心地よく体をほぐす。 「ああ、気持ちいい。夢みたい」  ヤクザの家にお邪魔していることも忘れ、悠は素敵なバスタイムを楽しんだ。  脱衣所に上がると、そこにはバスローブが用意してある。 「これ、お風呂に入る前には無かったよね」  あの人が、持って来てくれたのかな。 「何だ。案外優しいとこあるじゃん」  ぶかぶかのバスローブを着ると、悠はリビングへ戻った。 「お風呂、ご馳走様でした」  慎也は、ブランデーのグラスを傾けていた。  立ち上がると、黙って悠の傍に来る。 「な、何?」 「フリッジの中のものは、自由に飲んでいい。だが、酒は飲むなよ」 「はー、じゃなくって、はい」  バスルームに慎也が入ったことをそっと確認し、悠は冷蔵庫を開けた。 「わあ! いろいろ入ってる!」  その中からグレープフルーツのジュースを選び、飲んで喉を潤した。
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